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顧客体験にフォーカスするメディア「XD(クロスディー)」編集部による連載

「本当に、これがあの『ハッピーターン』ですか?」

かわいいパッケージに入った、和三盆や抹茶の風味の焼き菓子を前にして、そう聞かずにはいられなかった。

これだけではない。亀田製菓の「柿の種」は、さまざまな食感とフレーバーのプレミアム品に。日清食品「カップヌードル」は、おしゃれなカップコーヒーのようなビジュアルに。ハウス食品の「バーモントカレー」と「ジャワカレー」は、具の詰まったカレーパンへと、その姿を変えている。



既存のブランドイメージを覆す商品を展開するのは、関西最大手の百貨店である、阪急うめだ本店の地階食品売場だ。「劇場型百貨店」のストアコンセプト通り、臨場感ある“ワクワク”を届けようと、有名ブランドと手を組んで、阪急だけのオリジナル商品を開発している。

百貨店として、ただモノを販売するだけでなく、コトを通じた新たな顧客体験を創出しようとする阪急。そのなかで、阪急うめだ本店の“デパ地下”は、なぜコラボ商品の開発に目をつけたのか。背後にある「オンリーワン戦略」の狙いを、フード新規事業開発部を率いる馬場淳士氏に尋ねた。

※この記事は、2019年12月に公開されたものを転載しております。

顧客が足を運びたくなる「劇場型百貨店」への転換


阪急うめだ本店は、建物の構造からして“小売店”の常識を覆すような店舗だ。9階から12階にかけて広がるのは、「祝祭広場」という巨大な吹き抜け空間。他にも随所にイベントスペースが用意され、収益を度外視して展開される企画は、エンターテインメントパークのような高揚感を人々にもたらしてくれる。

客数と売上の減少に苦しむ百貨店業界のなかでも、成長を続ける同店。現在は1日あたり約13.8万人が来店し、年間の売上高は2507億円に及ぶ。

今日に至るきっかけとなったのは、2012年の阪急うめだ本店リニューアルだ。馬場氏は「百貨店の未来を見据えた際の“危機感”から、すべてが始まったんです」と語る。


阪急阪神百貨店 第1店舗グループ フード商品統括部 フード新規事業開発部 部長 馬場淳士氏

「その昔、百貨店には多くのお客様が、常日頃からモノを求めて来店されていました。ところが、時代の変化と共に、“なんでもモノが揃う環境”は、百貨店でなくてもつくれるようになります。さらに国内マーケットも成熟し、“モノ離れ”が進む一方、少子高齢化で人口は減少。百貨店の現実は、非常に厳しいものとなっていきました」(馬場)

コンビニの増加やショッピングモールの台頭、ECの発達……それらの進化により、百貨店の経営は危ぶまれた。誰かの「買いたい」に対して、モノという答えを用意するだけでは生き残れない。そこで考えたのが、場があるからこそできる「コトの体験」だった。

「阪急で過ごしていただく時間そのものを充実させようと、『劇場型百貨店』のフレーズが生まれました。この言葉には、お客様がつい足を運びたくなる、“ワクワク感”が詰め込まれています。

執筆=鈴木しの 編集=佐々木将史 撮影=其田有輝也

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