海洋保全の鍵を握る「ジェンダー平等」。女性たちのイノベーションとは

(Getty Images)


ジェンダー平等に焦点を当てたことが好結果を呼んだ事例は、オリッサ州に限られたものではありません。メキシコ湾とカリブ海の間に突き出たユカタン半島で女性たちによって展開された、草の根的なリサイクル活動もその例として挙げられるでしょう。

この活動は、固形廃棄物の管理状況が大きく改善されたことに加え、沿岸地域にある多数の地域の大勢の住民が湿地とビーチの清掃プロジェクトに参加することで、プラスチック廃棄物の問題に取り組むきっかけを与えたとして、メキシコ国内で大きな注目を浴びました。

フィリピンでは、ジェンダー主流化によって統合的な漁場管理の方法を導入したことで、貧困が解消に向かいつつあります。この漁場管理では、魚類生産、マングローブの造林、沿岸地域の生物多様性の再生の3つが同時に行われており、貧しい漁家に収入と食料安全保障を向上するための選択肢を与えることになりました。

オリッサ州、ユカタン半島、そしてこのフィリピンにみられる女性中心の革新的な取り組みは、今年の国連環境計画の調査で取り上げられています。

女性だけの国際海洋探査チーム


海洋活動においては、あらゆる部門でジェンダー平等の重要性が叫ばれつつあります。そんな中、国連の国際海事機関と世界海事大学が、海運、港湾、水産などの各業界に残る男女格差の是正に向けた変革を推進しています。

プラスチック廃棄物が発生源からガンジス川を流れて海まで運ばれてくる経緯を調査・把握するために、ナショナルジオグラフィック、インド野生生物研究所、ダッカ大学によって女性だけの国際探査チームが結成されました。その狙いは、プラスチック廃棄物の流れに関する重要な問題を正しく理解し、それに対する包括的な解決策を探ることです。

人類にとって最も貴重でありながらも、その価値が最も正当に評価されていない、かけがえのない存在である「海」。海洋の保全においてジェンダー平等の実現が重要な役割を果たすことを私たちは強調したいと考えています。

海は食料や酸素の供給源であり、世界中の人たちが生命や生活を維持する拠り所として重要な役割を担っています。人類が地球上で存続していくうえで不可欠であり、気候変動といった喫緊の課題への取り組みにおいてもカギを握っています。今世紀の半ばに100億人に達する人類に持続的に食料を供給してくれる存在でもあります。

こうした理由から、包括的な計画によって海洋を保全していくことで世界中の国々が同意しました。それが、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「海の豊かさを守ろう」と、その下位目標である10の具体的なターゲットです。ここでは、ジェンダー平等への取り組みがこれらのターゲットの達成に貢献することについて解説します。
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文=Peter Thomson, United Nations Secretary-General's Special Envoy for the Ocean, United Nations / Isabella Lövin, Minister for International Development Cooperation, Ministry of Foreign Affairs of Sweden

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