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5Gが拓く未来


誰もが通信事業者になれるローカル5G


次に、5Gでどんな新しい技術が実現できるか、その可能性を検証する「5G総合実証試験」を見てみましょう。これは3カ年の事業として、毎年公募と採択を行っているもの。その3年目となる2019年度の実証試験では、伝統芸能の伝承や、雪害対策、酪農や畜産業の効率化、山岳登山者見守りシステムといった、地方部における社会課題の解決を目的としたユースケース開発に主眼が当てられました。

これらの実証試験の企画に先立って、「5G利活用アイデアコンテスト」という事業も実施されており、地方部の社会課題の抽出および解決アイデアが広く集められました。2年目までは「技術的課題」の解決が主題のものが多かったのに比べて、3年目では、5Gを「地方創生」の文脈で捉える動きがより鮮明となったと言えるでしょう。

通信は公共サービスのように捉えられることも多いですが、水道や電気とは異なる点があります。水道や電気は、消費者1人あたりの利用量にそれほど差がありませんが、通信はヘビーユーザとライトユーザで利用量が100倍、1000倍違うという状況が起こります。そして人口密度の高い都市部に、ヘビーユーザは集中しています。つまり通信ニーズは都市部に極端に偏在し、通信とは「都市型インフラ」であると言えるでしょう。

通信事業者も通信料収入が期待できる都市部から設備投資をするのが合理的です。そのため、高い基盤展開率を追求しながらも、過疎地や非居住地域より、どうしても都市部への投資が優先されます。

一方で、少子高齢化や人手不足、公共インフラの維持といった社会課題は、過疎地や非居住地域こそ深刻で、5Gを含めた情報通信技術による解決が期待されます。

このジレンマを解決するための制度が「ローカル5G」です。これは、特定の空間において申請をすれば、誰もが通信事業者になれるというもので、地方創生を加速するための政策です。これには2019年12月の受付開始より、事業者や自治体の申請が相次いでいます。

こうして見てきたように、5Gにまつわる政策は、冒頭で述べたように地方創生の色合いが極めて強いという特徴があるのです。

ここで挙げた他にも、過疎地などの条件不利地域における補助や、ローカル5Gの実装に関する補助、そして通信事業者の当初計画以上の設備投資やローカル5G事業者の設備投資に対する優遇税制など、5Gによる地方創生を意図した政策が次々と打ち出されています。

このような強力な推進政策に牽引され、5Gは都市型インフラでありながら、地方部への導入も速やかに進んでいくことが期待されています。


亀井卓也

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文=亀井卓也

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