エリアカバーは必達目標。非居住地域もカバーする5Gが「地方」を変える #読む5G

サムネイルデザイン=高田尚弥

前稿では、通信産業をP(Politics)・E(Economy)・S(Society)・T(Technology)の4つの視点から見立て、5G時代の社会像について考察しました。本稿以降では、このそれぞれについて深掘りしていきたいと思います。まずはPolitics、政策的視点からのトレンドです。

モバイル通信の政策は、少数の事業者による独占が起こらないように、健全な「競争政策」、公共資産である電波を効率的に利用するための「電波政策」、そして技術革新を促進する「技術政策」で進められています。

このような通信政策は、5Gにおいてももちろん推進されています。ただし、5Gでは、それに加えて「地方創生政策」としての意味合いが強いのが特徴です。その理由に、5G周波数の割当要件が挙げられます。

人口密度が低い地域にも5Gエリアを


モバイル通信は、電波、つまり周波数の割当を受けなければ、通信事業者がサービスを提供することはできません。周波数の割当は、規制当局が課した要件を満たすように、通信事業者がエリア展開の設備投資計画を提出し、それを当局が評価することによって行われます。

2019年4月の5G周波数の割当においては、当局が課す要件に「基盤展開率」という条件が定められました。これはつまり「エリアカバレッジ」のこと。日本の国土を10平方キロメートル四方に区切り、4500のメッシュにしたとき、そのうちの何パーセントに基地局を設置できるかという割合で定義されます。

5G周波数の割当では、通信事業者には5年以内に基盤展開率50パーセントを越えるという条件が課されています。つまりサービス開始の2020年から2024年までに、4500の全国メッシュのうち、2250以上のメッシュに基地局を設置しなければいけないことになります。

日本は東名阪地域に人口の約半分が集中しているので、国土の3割ほどをカバーすれば、人口で9割をカバーできる計算になります。基盤展開率50パーセントを周波数の割当要件に課すということは、人口密度が必ずしも高くない地域にも5Gのエリアを構築しなければいけないということになるのです。

そのような当局からの条件に対し、通信事業者はどう応えたかというと、NTTドコモとKDDIは5年間で基盤展開率9割超、ソフトバンクと楽天も6割前後と、5割を大きく超える計画を提出しています。NTTドコモとKDDIは、このような計画を策定した結果、ソフトバンクと楽天よりも大きな周波数帯域の割当を受けることになりました。

通信事業者の計画は「必達」目標ですので、5Gの人口カバレッジは速やかに進むでしょう。人口密度の高くない地域にも基地局はどんどん広がり、人が住んでいない地域にすら5Gエリアは拡大されていくことになります。
次ページ > ローカル5Gによる地方創生

文=亀井卓也

タグ:

連載

読む5G

ForbesBrandVoice

人気記事