試練に遭ったら、幸運だと思いなさい──稲盛和夫流「成功」のつくり方

稲盛和夫(Boston Globe / Getty Images)


まずは、いまを肯定すること


では、なぜ京セラは成長したのか。これほどの会社になったのか。そのキーワードが「人間性」です。

仕事は人を成長させます。「成長するとはどういうことかといえば、人間性が高まっていくということだ」と稲盛さんは言いました。「知識やスキルも大事だけれど、この人間性こそ立派にしていかないといけない。そうでなければ、人の上に立つことなどできない。人を動かすこともできない」とも。

では、人間性が高い人とはどういう人なのか。「損得ではなく、善悪で判断できる人。自分にとっては不利益でも、善であればそれを選択できる。そんな心の持ち主だ」と稲盛さんは言います。

損得を判断基準にする典型例は、利己的な人です。自分の昇進や収入のために働く人。対して利他的な人は、誰かのために働こうという人。さて、どちらに人はついていくか。京セラの急成長には、こうした稲盛さんの人間観があったのです。

そして、その人間性を高めるものこそが、実は「試練」なのです。歴史上の偉人たちはみな、厳しい試練に見舞われています。しかし、それを乗り越えてこそ誰もが一目置く存在になった。辛酸をなめて苦労をしたからこそ、そうなっていったのです。

「いまは豊かな時代。その意味で、現代に生きる人は大変だ」と稲盛さんは言います。苦労を見つけなければならないから。自ら苦労に飛び込まないといけないからです。だから、「試練に遭ったときには、むしろ幸運だと思え」と言うのです。

一見、不幸に思えることも、最終的には不幸になるとは限りません。むしろ逆境から這い上がっていくほうが、大きな収穫を得られるかもしれない。その不幸が、幸運をもたらしてくれるかもしれない。

「まずは、いまを肯定する。そして、明るく前向きに努力する。うまくいってもいかなくても、ここからが始まり」

稲盛和夫さんへの取材で、もっとも印象に残った言葉です。

文=上阪 徹

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