「眠り」が見えるとどう変わる? ジーンクエスト高橋祥子の場合

ジーンクエスト代表の高橋祥子(左)とニューロスペース代表の小林孝徳(右)


──レムの時に夢を見ていたり覚えていたりすることの良し悪しはあるのでしょうか?

小林:今のサイエンスでは良し悪しは語れず、夢の見やすさついても、人の睡眠のパーソナリティとして判断します。まだ立証されていませんが、これまで話した人では、記憶力が良かったり、物事を映像やイメージで記憶する人は、夢をたくさん見たり覚えたりしている傾向があるようです。

かつて「レム睡眠は夢を見る浅い睡眠だから悪い」とされた時期もありましたが、最近は、昼間にあった事実と感情を切り離して、嫌なことを忘れることにひと役買うなど、ストレスの解消や心の気持ちの整理に重要な役割を果たすことがわかってきています。

高橋:たしかに、嫌なことがあっても、朝起きた時に忘れているタイプではあるかもしれないです。今日の夢は、たこ焼きの大食い競争に出ていて、「意気込みをどうぞ!」と言われて、「大阪出身としては負けられないですね」と答えていました(笑)。昨日嫌なことがあったわけではないですが、もしあったとしても朝起きたら忘れてる、というのはあります。



──では、高橋さんの睡眠の特徴をふまえて、どのようなアドバイスをされたのでしょう?

小林:その日の睡眠が成功するかは、睡眠の前半3〜4時間にどれだけ深い眠りを実現できるかに依存します。まずはそこを増やすために、眠りの質を上げる方法や習慣のアドバイスをしました。

また、夜型かつロングスリーパーというのは高橋さんのパーソナリティであり、人それぞれ合うものが違う「ファッションみたいなもの」とお伝えして、無理に朝早起きする意識をなくしてもらうようにしました。

高橋:具体的には、体温と光の調整、そしてスマホとの付き合い方についてアドバイスをもらいました。体温調整のために、毎日15分くらいお風呂に浸かってくださいと。私はもともと、「お風呂の時間って、10年間で考えると何日分になるんだろう」と、時間をもったいなく感じて、シャワーでさっと済ませてたんですが、それでは体温が上がらないようで。

小林:お風呂は、熱いお湯だと表面だけで深部まで温まらないので、39〜41度のお湯に10〜15分くらいゆっくり浸かるのがポイントです。人は、体温が下がっていくときに深い眠りや寝つきが促される仕組みがあるので、寝る1時間前ぐらいに入るのが理想ですね。

また、高橋さんは湯船で英語の勉強をしたりするということだったのですが、頭を使うことをせず“リラックスモードに切り替える”意識を持ってもらうようにしました。オン・オフのスイッチとして利用するんです。

──その他、光やスマホというのは何を改善したのでしょうか?

小林:高橋さんはベッドに入ってからなかなか寝られず、眠れないからKindleで本を読んで、30分ほどすると眠れるようになるようで、「寝る前に読書がないと眠れない」という自己認識があったんです。でも人間は、場所とそこでの行為をセットで記憶する特徴があるので、ベッドでスマホをいじると「ベッド=情報をインプットする場所」と認識してしまう。それが条件反射的に出てしまうので、まずは「ベッド=寝る場所」という認識を作ってもらうようにしました。



高橋:寝る前のスマホがよくないのは知ってましたが、とはいえ……みたいなところがあって。でも読書をやめても、意外とすぐに寝れました。あと光に関しては、夜8時以降は、スマホの画面をちょっと暗めの“ナイトシフトモード”にしています。就寝前の部屋を暗めにするという調整も行いました。

小林:眠りに悩んだとき、ほとんどの人が枕や布団、睡眠薬でどうにかしようとするのですが、そういうお金のかかることは全然必要がない。それよりも、自分の睡眠の特徴を知って、改善ポイントを理解し、いかに行動を変えていくかということ。ここまでに挙げたことは、誰でも、今日からでも実践できます。
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モデレータ=成田真弥(リアルテックHD) 編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

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