景気後退の指標が示す経済の現状は?
現在の市場も、逆イールドの予測が試される状況にある。今回の逆イールドは11か月前に発生。2019年の夏にかけてその範囲が広がり、ギャップの幅も拡大していった。イールドカーブに関する限り、これは景気後退が近づいているという比較的はっきりした兆しだ。だが、問題は当然ながら、本当に今後景気が後退するのかという点だ。
1966年に逆イールドが発生したものの景気が後退しなかったケースがあるため、今回も空振りに終わる可能性はある。とはいえこれらの指標は、実態に先んじて景気後退を知らせるため、逆イールドは正確に景気後退を予測しているが、まだその時期が来ていないだけとも考えられる。判断を下すにはまだ時期が早すぎる。2020年内に景気後退がなければ、今回の逆イールドは空振りだったと結論づけても良いだろう。
失業率のほうは多少事情が異なる。クリーセンによれば、過去の景気サイクルを見る限り、失業率が4%を切った場合は景気後退に近づいているという。
しかし、失業率についても、それほど明確に言い切れるものではない。確かに2020年1月の失業率は、前月の3.5%から、3.6%へとわずかに上昇した。だが、これで底を打ったと断言するのは難しい。
例えば、アメリカの失業率は2019年夏に上昇したが、秋になると再び下降線をたどった。上下どちらにせよ、その動きは鈍い。失業率の0.1%の変化をパターンと呼ぶわけにはいかないだろう。
本当に底を打ったと認識するには、よりはっきりした失業率の上昇傾向を確認する必要がある。イールドカーブの場合は、(正確な定義は人によって異なるものの)逆イールドは非常に明確な現象だが、失業率の谷は、後で振り返った時のほうがよりわかりやすいという特徴がある。
最終的に、単一の景気後退指標に全幅の信頼を寄せるのはリスクが高すぎるだろうと、クリーセンは示唆している。これはつまり、さまざまな指標を組み合わせて判断することが、より確実な景気後退の予測につながるということだ。最も優秀な指標でも、1つだけでは景気後退のタイミングを1年前後のスパンでしか予測できないことを考えると、これは理にかなった結論のように思える。