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しかし、1.00%はNZドルと並び、豪ドルや英ポンドの0.75%と肉薄する。これまでFRBがどれほどハト派色の強い情報発信や決定をしてもドル高相場が崩れなかったのは、日欧金利の水没を背景として「高金利通貨としてのドル」の立ち位置が不変だったからだ。しかし、ここからさらに米国が利下げを進めて行けば、そうしたドルの立ち位置にも揺らぎは生じ得る。

本稿執筆時点(3月2日15時)で、円は年初来の対ドル変化率がプラスに転じ、最強通貨へ返り咲いている。今後、FF金利や米10年金利が1.00%割れを展望するような局面を想定するならば、「マイナス金利の下限」が意識される日欧金利との差は一段と詰まってくる。

今後、主要中銀が協調声明などを出して一時的にドル相場が持ち直すシーンもあるだろうが、基本的にドル建て資産の相対的な優位性が危うくなりそうだという認識は持ちたい。

中国→欧州→米国という「いつか来た道」


当初、2020年の世界経済は欧州と中国という昨年まで足枷となっていた地域の成長率が復調するという見通しだった。その上で、最善のケースとしてFRBも利上げを視野に納め、本当の意味で2019年に行われた3回の利下げが「予防的」だったことが証明されるという期待もないわけではなかった。

しかし、もうこのシナリオは実質的に芽が摘まれている。中国の内需を主たる成長エンジンとするユーロ圏は復調の契機を損なった可能性がかなり高いと見受けられる。

また、中国の不調を抜きにしてもユーロ圏自身を取り巻く状況が相当怪しくなってきている。既報の通り、新型コロナウイルスの感染拡大という意味ではイタリアが一部地域を閉鎖するなど、もはや日本よりも深刻な状況にあると言われる。イタリアは昨年10~12月期GDPが前期比 -0.2%であったため、今期もマイナスとなれば景気後退(テクニカル・リセッション)だ。

何より、EU域内においてはシェンゲン協定によりパスポートコントロールなしで人の往来が認められている以上、感染が隣国へ拡大するのも時間の問題との見方は多い。かかる状況下、ユーロ圏は従前の緊縮的な財政ルールを多少歪めても下押し圧力の減殺に努めるものとみられるが、潮流を変えるのは相当に困難であろう。

中国と欧州が失速したことに対して「予防的利下げ」を謳ったのが2019年のFRBだった。既にパウエルFRB議長は利下げを示唆しており、「いつか来た道」を辿ろうとしている気がしてならない。

なお、産業別に言えば、過去2年間の世界経済情勢で最も苦しかったのが自動車産業だった。これは世界の乗用車輸出の4分の1がEU4大国から出ており、そのEUにとって巨大な貿易相手国である中国で低迷が続いているのだから必然の帰結である(その上、EUは度重なる厳格な排ガス規制の導入という自滅にも似た行為が重なっている)。

裾野の広い自動車産業が引き続き難局から出られそうにないという事実は、2020年の世界経済を引き続き苦しめる主たる理由の1つになりそうである。

株価追随で消費する利下げの糊代


今後については新型コロナウィルスの終息時期次第としか言いようがないが、FRBが25bpsずつ引き下げてあと7回も利下げできるという事実は大事である。これだけ糊代があれば、もう1回ほどは1年弱にわたる株価上昇局面を演出できる望みはある。

だが、そうした株価追随型の政策調整を続ければ、政策金利の水準はあっという間に切り下がる。2月に円やユーロ、スイスフランが対ドルで値を上げたのはこうした展開を織り込んだものと考えたいところである。

2014年6月以降、6年弱にわたって続くドル高局面は、「ドルは高金利通貨だから」という大義の下で継続してきた。しかし、コロナショックを経て、いよいよその大義が怪しくなり始めているというのが現状では一番のポイントであるように感じられる。

文=唐鎌大輔

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