「世界の終わりのよう」ヨーロッパもコロナの不安に飲まれるのか

Shutterstock


パニック状態に陥ってしまったイタリア


バルセロナに戻ると、一緒のアパートに住んでいるイギリス人とイタリア人がとても心配そうに様子を伺って来た。「ミラノに行ってたのでしょう? 出国する時何も問題はなかった? バルセロナの感染者はミラノから帰国したばかりの人だったと聞いて心配してたのよ」とのことだった。そこでようやく、筆者はことの重大さを理解した。特に、このイタリア人は両親に故郷のシチリア島に戻ってくるよう提案されたそうだ。バルセロナもいつ事態が急変するかわからないから、家で一緒に安静にしていようということだった。

もちろん彼女はノーと答え、引き続き今もバルセロナで大学に通っている。しかしイタリアの現状についてかなり落胆しているようすだった。「コロナウイルスは深刻なのはわかるけど、イタリアのメディアはかえって事態を悪化させているわ。今までこんなことがほとんど無かったから焦るのはわかるけど、こんなに脅したって世間が混乱するだけよ。もっと冷静な報道の仕方や対応があったと思う」

BBCニュースによると、イタリアでは既に12人が死亡しており、400人の患者がいると報告されている。レッドゾーンと言われているミラノのロンバルディア州では、現在は少し緩和したそうだが、2週間街は完全閉鎖された。外を出歩く時はマスク着用を要求され、仮にこのルールを守らなければ自宅に帰されたそうだ。学校も仕事も全て保留状態で、外出する理由もないため、外を出歩く人は今も多くない。

オランダのメディアNUによると、オランダでも27日に1人目の感染者が報告されたようだ。56歳の男性だが、彼も感染前にロンバルディア州に訪れていた。発覚する前日に病院にて隔離された。筆者の周りのオランダ人によると、多くの人々が、軽度の患者に対する自宅治療について不満を持っているそうだ。

コロナウイルス コロナ
Shutterstock

まるで世界の終わりのよう、怯える若者


これまで日本では中東呼吸器症候群(MERS)や重症呼吸器症候群(SARS)などの事例があったため、「史上最悪のウイルス」とは言われているものの、何度か直面したことがある困難だ。しかしヨーロッパでは、近年はウイルスによる緊急事態はほとんど無かった。そのため、バルセロナのように警戒心がかなり薄い地域もあれば、イタリアのように急増する感染者によりひたすら社会全体が混乱に陥る地域がある。

ヨーロッパでは国ごとで温度差はあるが、若者たちは自国のニュースを見て怯えている。「なんだか世界の終わりのような気分だ。映画の中にいるみたいだよ」とイタリア人の友人は呟いた。

とはいえアジアでの現状を日本のニュースやSNSでウォッチしている筆者からすると、まだまだヨーロッパは落ち着いている方だ。アジア人を見て過剰反応をする人もほぼいなければ、体感としては、マスクを装着している人は10%もいない。
次ページ > 「ひとごと」ながら心がけていること

文=裵麗善/Ryoseon Bae

ForbesBrandVoice

人気記事