「塩」は敵か味方か? 食塩の規格への問い

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世界的に通用する唯一の食品規格「CODEX」では、食用塩の品質規格として「NaCl(塩化ナトリウム)純度が97%以上であること」と定めています。

これを決めているのは、1963年にFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)によって設置されたコーデックス委員会で、農林水産省によると、この委員会の目的は、消費者の健康の保護や食品の公正な貿易の確保など。日本は1966年に加盟しています。

では、97%のNaCl以外の3%とは何か? それはカルシウム、カリウム、マグネシウムなどで、現代社会で人々に不足してると言われるミネラル成分です。

私の住むフランスでは、南部のカマルグやブルターニュのゲランドなど、一部の天日塩生産者組合連合が度重なる要請をして、フランス国内ではNaCl純度が94%以上と改正されています。この3%の違いで随分ミネラル不足を補えるには違いないですが、その天日塩と精製塩では、特に価格において大きな差があり、手頃に誰でも消費できないのも現実です。


ゲランドの塩田(Matthieu Tuffet / Shutterstock.com)

太宰府での気づき


2月頭、その塩について、歴史から学ぶ機会がありました。僕の地元福岡と東京の起業家たちという志士で、太宰府天満宮と竈門神社、大宰府政庁跡地を訪問したのですが、そこで見たこと、感じたことに多くのヒントがあったのです。

実は太宰府は、新元号が発表されて以来、「令和のふるさと」と呼ばれています。というのも、令和の典拠とされる「万葉集」に収められた「梅花の歌 三十二首 序文」が、およそ1300年前、大宰府の長官を任されていた大伴旅人(おおとものたびと)が開いた宴会「梅花の宴」の様子を記したものとされているからです。

現在の大宰府政庁跡地には記念館があり、そこにはその梅花の宴の際の食事の様子が博多人形を使って展示されていて、そこで食べられていたであろう酒と肴、その後に行われた饗宴で出された特別なお膳を再現されていました。

食材は地元の産物に加えて、各地から収められた干し肉などの特産品があり、食料の集荷も大変であったであろう当時、これこそ言葉の通りご馳走であっただろうと思います。

お膳の手元には酢と醤と塩が盛られていたのですが、塩には「海水を煮詰めたもの」と注意書きがありました。昔の塩は、精製をしていないので海の成分をそのままにマグネシウム、カルシウム、カリウムを多く含み、また、藻のお陰でumamiも含んだとても優秀な調味料であったのです。
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文=松嶋啓介

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