休校は本当に有効?新型コロナ対策を最新症例データから分析

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確かに中国式の検疫では、患者と接触があったことがはっきりしており、ウイルスの潜伏期間中である患者からの感染を予防することができる。しかし、無症状だが感染力があるキャリアからの感染を防ぐことはできない。なぜなら、市中で誰がキャリアだかわからないからである。

ダイヤモンド・プリンセスの調査結果を見ると、キャリア感染は新型コロナウイルス感染者の約半数であった。すなわち新型コロナウイルス感染を発症する人が市中に100人いれば、無症状であるキャリアも同じく100人いるということだ。

誰から感染したかわからない市中感染が多発するということは、すでにキャリアの人が市中にいると考えるべきだろう。この場合、社会活動への参加を控え、各人が他者と接触する機会を極力減らすことが有効だ。濃厚接触の機会を減らすのはもちろんのこと、イベントなど大勢の人々が集まる場は、濃厚接触ではなくとも感染のリスクは上がるため、避けるべきである。

社会から距離を取るという意味で、この対策は“social distancing”と呼ばれている。その効果を、ダイヤモンド・プリンセスでの感染拡大への対応に見ることができる。

 ダイヤモンド・プリンセスで何が起きていたのか?



(図1)潜伏期間のヒストグラム:Li Q, et al. Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus-Infected Pneumonia. N Engl J Med. 2020 Jan 29. doi: 10.1056/NEJMoa2001316.

(図2)ダイヤモンド・プリンセス乗客の新型コロナウイルス感染の流行曲線。横軸は発症日、縦軸は発症者数。 出典:厚労省ホームページより https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599265.pdf に潜伏期間のヒストグラム(赤)を重ねた。

図1から、感染から発症までの日数、すなわち潜伏期間として最も多いのが「3日」とわかる。そして図2を見ると、2月5日に船内個室管理を始めてから2日後に発症のピークを迎え、後に速やかに乗客(青の棒グラフ)の発症者数が減少に転じている。潜伏期間の最頻値は3日であるので、2月7日の患者発生ピークは2月4日の感染と考えられる。つまり、船内個室管理により、乗客の感染拡大はほぼ止まったと考えられる。

逆に、係留・検疫していなかったら、数百人の新型コロナウイルス陽性患者が日本全国の自宅に帰ることになっていた可能性がある。そうなれば、日本全国で一気に感染が広がり、今ごろは大変なことになっていたかもしれない。

結果として、実施された14日間の検疫は、Social distancing として極めて有効であったと判断できそうだ。これは北海道で、2月28日から開始される外出自粛の根拠となるかもしれない。

ただ今回のクルーズ船の例とは違い国内で濃厚接触があり感染した場合は、仮に自宅であったとしても14日間検疫下に置く、あるいは外出を自粛させるのは、個人の行動の自由を束縛することから倫理的、法律的に困難である。

そのため、あくまで「なるべく控えてください」というお願いベースとなり効果が緩い。今、政治に求められることは、何故、大規模集会やイベントを控えるのか、休校なのか、外出自粛なのかを国民に十分説明することだろう。
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文=浦島充佳

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