上田氏はまた、文学者としての「クリエイティブな発想」を武器に、最先端のIT企業の経営にも取り組む実業家であることでも知られている。本企画は、上田が、「クリエイティブな発想法」を基にして、社会にイノベーションを起こす各界のリーダーと対談するものである。
第3回は「Nextメルカリ」として注目されるスタートアップであり、スマホ向けゲーム配信プラットフォーム「Mirrativ」の運営会社「ミラティブ 」CEO、赤川隼一だ。
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上田岳弘:ミラティブの立ち上げは、赤川さんが所属していたDeNAの新規事業が元になっているんですよね。そして、赤川さんはDeNAでは最年少の執行役員だったとか。
赤川隼一:はい、はい、新卒で就職し、入社半年でマネージャー、その後「Yahoo!モバゲー」の立ち上げを担当し、海外事業の責任者などを務めた後、28歳で執行役員になりました。DeNAには「抜擢カルチャー」があり、結果を出すエースを引っこ抜く「芋掘り」みたいなことは日常茶飯事でしたね。
上田:「モバゲー」では何をやったんですか? ゲームづくり?
赤川:はい、ゲームづくりもやりましたが、他にも例えばヤフー株式会社と一緒にPC版モバゲーをゼロから立ち上げたり、モバゲーを海外展開をやったり。その後はゲームを実際につくって運営する部署のマネジメントをやったり、管理の仕事もひと通りしていました。
上田:そもそも「スマホでのゲーム実況」という領域に目をつけられた経緯は?
赤川:2014〜15年、ゲーム実況を見ている人が世界で毎月1億人いるとか、アマゾンがその会社を約1千億円で買ったとかいうニュースを見ており、ゲーム人口自体がスマホ中心に増えていくことを考えると、これからは絶対にゲーム実況はモバイルになると確信しました。次の新しいエンターテインメントインフラになると感じたんです。そんな時にスマホだけでゲーム実況できる技術を見つけて、「ミラティブ」を立ち上げました。
上田:僕自身もやっていることですが、ビジネスと芸術、2つの領域にまたがって活動することの「掛け算」や「化学反応」についてはとても興味があります。赤川さんも、学生時代は音楽にかなり傾倒されていたと聞きましたが。
赤川:はい。中学時代にボストンに3カ月いて、そこでビートルズに出会って、音楽オタクになりました。高校時代は、昼食を抜いて中古CD屋に通っていましたね。
上田:そして、音楽を通じてインターネットの魅力に出会ったとか。ちょうど世紀の変わり目に「ナップスター」でのファイル交換が多くの人の心をつかんだように、もともと音楽とインターネットの親和性は高い。
赤川:はい、僕らの高校時代は、1曲聴くために夜通しかけて5メガのデータをダウンロードしていましたが、インターネットの存在が音楽と個人の関わり方を変えましたよね。「テレホーダイの時間帯にWebサイトにアクセスすると、知らないおじさんが知らない音楽を教えてくれる。クラスにはそんな音楽を知っている友人はいないのに。
インターネット上で趣味を通じて人と人が出会い、「わかりあう」ことで、人生の可能性が爆発的に広がる。それが原体験として強烈にインストールされた高校時代でした。