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乳がんという「転機」


まず、けっこう傷は痛い。痛み止めを飲むほどではないが、突っ張るし、たまにズキズキする。腕は痛くて真上には上がらない。無理をするとピキピキする。

リンパ節への転移の有無のチェックのために、1つとはいえリンパ節を取ったので、将来リンパ浮腫になる可能性はゼロではないから、左腕は負担をかけない、皮膚を傷つけないように、一生! 気をつけないといけない。

左腕は、採血や注射ダメ、虫刺されダメ、トゲや切り傷ダメ、火傷や日焼けダメ、重い荷物ダメ、キツイ指輪や時計ダメ、キツイ服や下着や靴下ダメ、、、ダメダメダメ、、、で、さっそく重い腕時計をメルカリで売った。(けっこう高く売れた!)

しかし、重い荷物がダメって、はやくもキャリーバッグをゴロゴロ引きずってスーパーに行かねばならないのか。まだおばあさんじゃないのに。キャリーバッグと長いつきあいになるなら、真っ赤のリモワのミニキャリーでも買ってやるか!

話がそれた。傷口のケア。大きい傷口は、入院中、チェックしてくださる先生たちに「きれいですね」と言われ続けた。が、私からすると、傷は傷だ。テープから透けて見える幅5ミリ、長さ15センチの横一直線の傷跡は、赤黒く、思ったより長さも幅もあって、びっくりした。さらにもっと下のほうへいくと、ドレーン二本分の大きな2つの穴が開いている。この穴に関しては、ドレーンを抜いた翌日に退院したこともあって、自宅でも滲出液がまだ止まらない。

術前の講習で見せていただいた全摘患者の傷の写真は、手術からしばらく経った目立たない傷だったので、手術直後の自分の傷は、想像していたよりも大げさな傷だった。しかも、これまでなかったところに突然出現したので、どうしても自分の胸だという気がしなかった。

振り返ると、あの赤黒い色のインパクトが大きかったのではないかと思う。切って、縫って、まだくっついていないのだから、当然といえば当然なのだが、そこまで冷静にはなれなかった。ここからはきれいになっていく一方だ、と思うようにした。実際、その後、時間が経って赤黒さがなくなっていくにつれて、自分の傷だと思うことができるようになった。

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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