キャリア・教育

2020.02.28 07:30

変わらぬ、進まぬ就活改革。打開に挑むリモート管理職、そして1年前の「当事者」

左からガイアックスの管大輔、中津花音


同じころ管の部署で、ある地方大学生がインターンとして働いていた。そのインターン生が就職先の選択肢として挙げるのは、誰もが名前を知っている大企業ばかり。大手志望というわけではなく、それ以外の企業の探し方を知らないだけだった。
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管の中で、企業の悩みと地方大学生の実態がリンクした。新しいスキームを作って、魅力的な企業と優秀な地方大学生を結び付けたいと。こうして、“地方在住の学生のために、オンラインで合同企業説明会&座談会を提供する”という、サービスの構想が生まれたのだ。

「私たちがサービスを作ることで、就活のあり方を変えられるかもしれない。リモートワークの先駆者であり、オンラインのコミュニケーションに長けたガイアックスだからこそ、取り組むべき事業ではないか」

事業部を完全リモートスタイルに変革、自身はアドレスホッパーを経てオランダに移住。海外からマネジメントを行うなど、距離を超えた働き方を実現してきた管。だからこそ、使命感を感じた。
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仕事も就活も、良いパフォーマンスを出すのに距離は関係ない


そこに仲間として加わったのが、中津花音(なかつかのん)。新卒一年目の社員である。長野県出身で名古屋大学に進学した中津自身も、かつては“当事者”だった。

父母も祖父も独立して仕事をしていたため、自然と「30代で経営に携われるくらいの力を付けたい」と思うように。そのためにも20代は挑戦を歓迎してくれる環境で働こうと、ITベンチャーを志望した。大学の友人の多くは地元の大手企業志望だった、情報の取得と共有に苦しんだ。

「なんとか情報を集めなければと、東京に何度も足を運びました。企業がたくさん集まっている東京に行くことで、魅力的な企業に出会える確率が上がる気がして」

そしてガイアックスに入社した中津。そこには、リモートワークを推進する社風があり、同期には「地元・広島に貢献する活動を続けたいから」と“新卒から即リモート”という特異な勤務形態を希望し、認められた者もいた。

「働いて気付いたんです。リモートワークだからパフォーマンスが落ちるなんてことはない。むしろ自分に合う場所で働くことでパフォーマンスが上がると。就活においても、学生が一番パフォーマンスを出せる環境で企業と出会えるようなしくみが作れたらいいなと思いました」

当時の自分と同じ悩みを持つ学生の道を照らしたい。応援者になりたい。中津はそんな思いで、この事業に加わると決めた。


企業と学生の面談には中津(中央上)も参加し、徹底的に企業に寄り添っている

「貯金が尽きる」「学業を諦める」、地方就活生のリアルに憤った


サービスを立ち上げるにあたり管は、二カ月間を掛けて100名以上もの地方大学生にヒアリングを実施した。印象的だったのは、ある学生の「貯金が無くなった」という話。

「卒業旅行や趣味に使おうと、アルバイトをしてコツコツお金を貯めていたそうなんです。その貯金が就活で必要な飛行機や高速バス代などの移動費、宿泊費、就活の合間に時間を潰すためのコーヒー代で無くなっちゃったと」

魅力的な企業と出会うためには、とりあえず東京に行かなければと思い、貯金をはたいたのだという。他にも、学業を犠牲にして、一カ月ほど東京で生活しながら就活をすることを選んだ学生もいた。

管は改めて思った。「就職先の選択肢を増やしてあげることは、オンラインでできる。距離の壁を取り払うことができれば、地方在住の就活生が抱えるお金や時間の悩みは解決される」と。

使命感はより強固なものとなった。
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文=倉本 祐美加 写真=小田駿一

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