変わらぬ、進まぬ就活改革。打開に挑むリモート管理職、そして1年前の「当事者」

左からガイアックスの管大輔、中津花音


絶対に学生ファースト、このコンセプトだけは意地でも曲げない


そして、「オンライン就活」という、文字通りのサービスが生まれた。

コンセプトは、“学生ファースト”。何度参加しても無料。人事と近い距離で話せるようにと、企業3社・学生15名のみの少人数型の企業説明会&座談会という形式にした。地方では開催の少ない就活セミナーもオンライン上で提供し、企業研究の方法や自己分析を指導するなど、学生の魅力開発・育成も担う。

もちろん、参加企業選びも妥協しない。ビジネスモデルやそこで働く人材が優れているなど、管が「自信を持っておすすめできる」という企業ばかりだ。

「ヒアリングをする中で、学生の純粋さに胸を打たれました。彼らが社会人としての第一歩を気持ちよく踏み出せるように、先に大人になった先輩として社会の“いい入り口”を用意してあげたいのです」

地方の学生に加えて、ターゲットとしている層がいる。それは、海外の大学に通う日本人学生。特に、高校卒業後すぐに海外大学への進学を決めた学生たちは、野心と行動力に満ち溢れていて、ユニークである。

しかし、彼らが海外にいながら多くの日本企業と出会うことは難しい。そのため、名前を知っている企業の中から就職先を選び、その企業のカルチャーと自身の個性がうまくフィットせず悩むケースも多いという。「自由な発想を持つ彼らにぴったりの企業はまだまだあるはず。その選択肢を提示したい」といった思いも、管は抱いている。

当たり前を変えに行く。距離を理由に就職の選択肢を狭めてはいけない


「オンライン就活」は、2020年中に登録学生数1万人を目指している。実際にこのサービスを活用して就活をした地方・海外の学生をインターンとして採用し、彼らが実体験をもって周りに語ることでサービスを普及させていく狙いだ。

地方・海外在住の学生が移動の負担なく東京の企業と出会えるオンライン就活には、大きな可能性を感じる。ただ、一つだけ気になったことがあった。それは、「優秀な学生の“東京一極集中”を助長させてしまうのでは?」ということ。率直に疑問をぶつけると、管はサービスの将来像を見据えながらこう答えた。

「東京に優秀な人材を集めることではなく、就職先の選択における物理的な距離の壁を取り払うことが我々のコンセプトです。ゆくゆくは地元にUターン就職したい東京在住の学生、そして社会人を支援するなど、東京から地方に人を動かすようなサービスにもしていきたいと思っています」

以前、管の元には、組織におけるリモートワークの取り入れ方を教えてほしいと数十社から問い合わせが来た。自社の事例を伝えたところ、さっそく真似てくれた企業も多く、自身の周りから少しずつリモートワークが浸透していく様を目の当たりにしたという。

「自分たちが先頭に立つことで、社会にある“これまでの当たり前”は変えられる」

彼らが常識をアップデートできるかどうか、暖かくも厳しい目で見守ってみようじゃないか。

文=倉本 祐美加 写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事