変わらぬ、進まぬ就活改革。打開に挑むリモート管理職、そして1年前の「当事者」

左からガイアックスの管大輔、中津花音

著者である私の、大学3年生の頃の話を、最初に少しだけ。

就活生だった私は大阪から東京に向かう夜行バスに乗り込んでいた。四列シート、隣の乗客との間にスペースも無い、一番安いバス。身体をできるだけ小さく丸め、狭い座席で目を瞑った。

夜行バスに乗っているのは、話を聞いてみたいと思った企業の説明会が、東京でしか開催されないから。距離の壁に少し躊躇しながらも、「せっかくのチャンスを逃すわけにはいかない」と、東京へ向かった。

明朝7時、新宿に着いた。眠ったはずなのに、休んだはずなのに……身体の奥にずんと重い謎の疲れが残っている。さて、説明会まで数時間もある。どうやって時間を潰そう。カフェかな。コーヒー代がかさむな、これ、馬鹿にならないんだよな。

そして1時間の説明会が終わった。私は、選考に進まないことに決めた。

今回の上京はタイミング悪く、他の企業の説明会を入れることができなかった。

私はまた、どこかで小さくないお金を使って時間を潰して、新宿発の夜行バスに乗り込み、大阪へ帰る。何度もそんな経験をした。

あれから時は流れ、社会は変化した。「働き方改革」のもと、多くの企業が多様な働き方を許容しはじめた。場所にとらわれず働くリモートワークも少しずつ、定着しつつある。

しかし、就活のあり方はどうだろうか。今日も日本のどこかで、夜行バスに揺られ東京へ向かう学生がきっといる。東京に行くことが難しく、企業との出会いを諦めてしまっている学生もいるかもしれない。

「可能性を見つけるために就職しているのに、距離の壁、経済的な理由でそれが狭まるのはおかしいのではないか?」

そう疑問を感じ、旧態依然の就活の形式に一石を投じようとしている会社がある。“新卒社員フルリモートワーク”、“管理職がオランダ移住”など多様な働き方を体現する株式会社ガイアックスである。

地方・海外在住の学生が東京の企業とオンラインで繋がることのできるサービス「オンライン就活」をリリースして、就活の“当たり前”を変えようとしている。

リモートワークの先駆者が感じた、「オンライン就活」の可能性


サービスの着想を得たのは、2019年初旬。ガイアックスの本部長である管大輔は、企業の採用広報を支援する中で人事担当者から幾度もこの言葉を聞く。「新卒採用におけるマッチングが、とても難しい」。

学生の数が減り、ただでさえ採用が簡単ではない時代。加えて、入社後も互いに幸せに働ける相性の見極めをするのは困難だ。特に、大企業と比べて学生からの知名度が劣るベンチャー企業では、その課題が深刻だった。「素晴らしいビジネスモデルがあり、いい経営者やいい人材がいる企業がたくさんあるのに、もったいない」と管は感じていた。
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文=倉本 祐美加 写真=小田駿一

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