さらに、2100年までを考えた場合、「事態はさらに深刻だ」とハワイ大学マノア校の海洋科学者のRenee Setterは話す。2100年までに、ほぼ全てのサンゴが姿を消すとSetterは警告した。
2月20日まで開催されたOcean Sciences Meetingでは、研究室で育てたサンゴを海に移植し、サンゴ礁を再生させる取り組みが議論された。この方法は短期的には効果をもたらすものの、2100年頃には環境の悪化により、サンゴが生き残ることは不可能になりそうだ。
昨年は学術ジャーナルNature Communicationsで公開された論文で、海中に設置したスピーカーから特定の種類のサウンドを流すと、死滅しかかったサンゴ礁の再生を促進できることが明かされていた。しかし、現状の速度で海洋汚染が進めば、サンゴが生き残ることは難しい。
サンゴは褐虫藻(かっちゅうそう)とよばれる藻類と共生しているが、水温上昇などが原因で褐虫藻を失い、その結果「白化」する。白化が進むとサンゴは死滅し、サンゴ礁の生態系が崩壊する。
サンゴの白化は、海洋汚染によっても発生する。さらに、海水の酸性化もサンゴの生育に大きなダメージを与える。大気中の二酸化炭素濃度が高まるにつれて、海が吸収する炭酸ガスも増加し、海水の酸性化が進むことになる。
サンゴは炭酸カルシウムで殻や骨格を形成するが、海が酸性化すると炭酸イオンが減って、殻や骨格を作れなくなってしまうのだ。
海水の温度上昇や酸性化は、人類による二酸化炭素排出が原因で起きている。また、海洋汚染の拡大は、新たに開拓された農地から流れ込む肥料が主な原因となっている。