展示作家・作品
【メイン展示】
クロード・モネ(クロード=オスカール・モネ)
『印象派』を代表するフランスの画家。1840年パリで誕生。生後まもなくセーヌ河口の港町、ル・アーヴルに移り住み、海景画家ウジェーヌ・ブーダンに出会う。当時まだ珍しかった戸外制作の魅力に目覚め、19歳でパリに出て画家への道を歩み始める。
当時、アトリエで丁寧に仕上げた写実的な歴史画や神話画などが、唯一模範的な芸術とされていた現状に不満を抱いたモネは、ルノワール、シスレー、ピサロなど、志を同じくする画家たちとグループをつくり、陽光と色彩を求めて戸外に赴き、身近な自然や人間の生活を描いた。
1874年に開いた初めてのグループ展で、モネの出品作「印象・日の出」を皮肉した批評家の言葉から『印象派』という呼び名が生まれ、今日にいたるまで、近代美術史上もっとも革命的な絵画運動として印象派主義は評価されている。
また、日本美術愛好者の集い「Les Amis de l’Art Japonais」の会員でもあり、多数の浮世絵のコレクションを保有、日本美術に強く影響を受けた画家の一人でもある。1870年代には妻カミーユに日本の着物を着けさせて団扇などの日本のモチーフを描き込んだ「ラ・ジャポネーズ」で典型的なジャポネズリー(日本趣味)の作品を制作している。
1890年代に、モネは「積みわら」や「ルーアン大聖堂」など、同じ対象を1日の様々な光や天候の中で描き分ける連作を手掛け、画家としての名声を手にする。50歳代には自宅の庭に睡蓮の池を掘り、日本の太鼓橋を建てるなど日本庭園を意識した「睡蓮の池と日本の橋」を描き、86歳で亡くなるまでその庭を描き続けた。特に睡蓮の池は重要なテーマとなり、約200点もの作品を残している。
展示予定作品
「印象・日の出」、「ラ・ジャポネーズ」、「積みわら」、「ロンドンの国会議事堂」、「ルーアン大聖堂」、「睡蓮」
【その他展示】
エドガー・ドガ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロ、ベルト・モリゾ、アルフレッド・シスレー、ギュスターヴ・カイユボット、メアリー・カサット
【監修コメント】
坂上桂子氏
東京都生まれ。早稲田大学教授。専門は近現代アート。主な著作『ジョルジュ・スーラ 点描のモデルニテ』(ブリュッケ)、『ベルト・モリゾ ある女性画家の生きた近代』(小学館)等。
「印象派は、光を描くことを探求したアートです。移り変わる一瞬の色合い、眩い輝き。
モネやルノワールたちは、それらを一筆一筆、細かいタッチで画布に留めようとしました。そんな印象派の世界観を現代のテクノロジーで味わう。それがイマーシブミュージアムです。
モネは人生の最後に、睡蓮の巨大な絵で、楕円形の部屋の壁をぐるりと取り囲むスペースをつくることを構想しました。オランジュリー美術館にある睡蓮の間がそれです。温室だったオランジュリーの建物は、ガラス張りの天井から光がさんさんと入ります。心地よい光のなか、まるで睡蓮の池のなかに身を置いたように感じられる空間。生涯、光をただひたすら求めて描き続けたモネが、最終的に目指したのは、光とともに絵画の世界へ没入(イマーシブ)体験できる場でした。
モネの構想からおよそ100年。21世紀の映像技術を駆使してつくられるイマーシブミュージアムではモネの夢見た世界からさらに展開して、新たな印象派が表現されています。小さなタッチは拡大され、踊り、私たちを取り囲み、現代的印象派の世界へといざないます。ここでは通常の展覧会や画集では知ることのできない絵画のミクロの世界と出会うことができます。これまでにないアート体験ができる貴重な場といえるでしょう」
Immersive Museumについて
世界的に著名な芸術作品を映像コンテンツ化し、広大な屋内空間の壁面と床面全てを埋め尽くす没入映像と特別な音響体験を提供する新感覚体験型アートエキシビション。従来の「鑑賞型」の芸術鑑賞のスタイルから「没入型」のスタイルを提供し、来場者に新たな芸術鑑賞の「視点」を提示する。従来の美術館のようなアナログアートから、最先端のデジタルアートへ新時代のアートコンテンツを展開し、日本のアート体験を拡張する“アート2.0”の象徴が「Immersive Museum」だ。