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自分で自分に、忖度しなくていい


日本のショービズ界を描いた作品として、蜷川の『ヘルタースケルター』を思い浮かべる人は多いだろう。そこで描かれる世界観と近しい部分はあれど、その後味は全く違う印象になるはずだ。蜷川は語る。「自分としては意識してなかったけど、出来上がってみたら双子のような……わりと近いところにあったんだなと思います。

一つ言えるのは、現実と物語の境目が曖昧になって、自分自身、どっちがどちらだかわからなくなったのは、ヘルターと一緒。その状態になって撮った作品には、ある種の熱量があるということなので、気にいってくれる人も多いんじゃないかな」

「日本にはいろんなドラマがあるけど、その中で描かれる女性たちはみんな結婚したがっていたり、悩んで大変だったり、女同士で戦っていたりする。でも、もっと多様性があっていいんじゃないかな、って。もちろんつらいこともたくさんあるけど、結構みんなで助け合ったり、楽しく生きていたりする。女でいることは楽しい、大人って楽しい、と軽やかに伝えられたら。幸せの形はいろいろあるよね、と提示できたらいいな、と思ったんです」

結婚するかどうかは別として、子どもを望むこと。子どもを育てながら、仕事でも評価されること。

「欲しいものがたくさんあるのは、いけないことですか」

リミが発する問いは、彼女の纏う華々しさと相まって、多くの人にとってまぶしすぎるほどに感じるかもしれない。私たちの多くは現実と折り合いをつけながら、ほどほどのところで満足したり、あきらめたりして「大人になる」。若者たちもまた、遠い憧れを求めるより、身近な存在に共感を寄せる。

一方、『FOLLOWERS』に登場するのは、いい意味で「あきらめの悪い人」たちばかりだ。家族やあるべき姿にとらわれない、ゆるやかな連帯で、困難を乗り越えようとする。

蜷川は語る。

「SNSがテーマの中心にあるドラマではあるけど、現実世界で一歩踏み出すことの大切さは、伝えたかったことの一つ。ネットでもさまざまな情報があるし、脳内でシミュレーションすればある程度の予測はつくかもしれないけど、別に、やる前からあきらめなくてもいいんじゃないかな、って。私自身、『やってみたらできた』ということがたくさんあるんです。そのぶん、いろんな人を巻き込んでもいるけど、みんなが助けてくれて、子どもたちもすくすく育ってるし、映画もできたしドラマもできた(笑)」

「なんというか……自分で自分に忖度することがほとんどない。誰もやっていないことだからやってはいけない、こうでなければならないと思うこともない。自分に制限をかけるのがイヤなんだと思います。目の前にあるものを『面白そう』『やってみたい』と思って、やってきた。ただ、それだけなんです」

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写真=ネットフリックス提供

ドラマではSNSで発信することの功罪が描かれるが、そこで大きく人生が回りはじめるのも確かだ。やるか、やらないか。多くの人がその判断を先送りにしつづけているのが、いまの世の中の閉塞感につながっているのかもしれない。

2月27日、世界190カ国へ解き放たれる『FOLLOWERS』は、どんな反響を巻き起こすだろうか。

「どうせまたいつものように、賛否両論、いろんな風が吹くんだろうなと思います。もう、ある種あきらめというか、覚悟ができました(笑)。やれることはやったし、あとは煮るなり焼くなり……と思うけど、やっぱり、好きでいてくれる人が少しでもたくさんいたらうれしいかな。きっとこれからもやってみて、『あれって結構チャレンジだったな』と、あとから振り返って気づくんだと思います」

文=大矢幸世 写真=小田駿一 リタッチ=上住真司

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