長生きをリスクにしない。定年後のセカンドライフ設計は生命保険から考えろ

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ファイナンシャルプランナーとして、お金のよろず相談に乗るようになってから早20年を過ぎた。以前は「50代で早期退職したい」「60歳以降はやりたいことに打ち込みたい」といった相談が多かったが、最近は「生涯現役で働きたい」「退職後に起業したい」といった相談もじわりと増えてきている。

そんなときに気になるのが、実は生命保険だ。「70歳定年」が閣議決定された今、「セカンドライフも働く」という生き方と生命保険について触れてみたい。

老後2000万円問題で明らかになった長生きの「リスク」


日本人の寿命は、ずっと伸び続けている。2018年の平均寿命は、男性が81.25歳、女性は87.32歳。日本人の長寿化には、衛生環境の改善と医療技術の発達が背景にあるが、最近はIT技術などの進歩もあり、さらなる医療技術の発展が長寿に結びついている。

とはいっても、喜んでばかりはいられない。寿命が延びるということは、つまりは、老後が伸びるということ。公的年金で老後の生活費のすべてをまかなえるなら気にもならないが、公的年金だけでは足りない現状があるから、長寿を「リスク」ととらえて対策を講じておかないと、長生きがつらくなりかねない。

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厚生労働省ホームページ 平成30年簡易生命表の概況「参考資料2 主な年齢の平均寿命の年次推移」

例えば、去年の6月に話題となった「老後2000万円問題」は、公的年金だけでは足りなくなる月々の生活費を5.5万円という前提で、65歳から95歳までの不足額をざっくり計算したものだ。

5.5万円×12カ月×30年=1980万円(約2000万円)

今の50代が就職した頃は、「人生80年時代」だったから、同じ設定でも不足額は5.5万円×12カ月×15年=990万円で済み、退職金を充てれば、なんとか帳尻を合わすことはできた。

それが、もっと長生きするとなると、不足額は年々膨らみ、退職金だけでは足りなくなる。人が長生きするということは、「器」となる家も長生きさせなければならないから、リフォーム費用なども見込む必要が出てくる。

この老後生活費の不足に対する特効薬は、やはり就労収入を増やすことだ。50代半ばで役職定年による収入ダウンになる人も多く、転職して収入アップを図ろうとするにも50代の求人は少ない。となると、まずは長く働くという選択肢が現実的だということになる。
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文=竹下さくら

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