ビジネス

2020.02.27

店なし「ゴーストキッチン」、フード業界の新潮流に 宅配ブームが追い風

Photo by Tada Images / Shutterstock.com


ブランド構築が鍵


ただ、テクノロジーの導入やサードパーティーへの委託による宅配コストは、飲食店の利益を食いつぶしかねない。これに対して、ゴースト(あるいはシェアード=共有)キッチンは、工業地区など賃料が繁華街よりも安い場所に設けることで、経費を抑え、利益を押し上げることができる。ゴーストキッチンでは通常、複数のブランドで経費を分担し、設備も共有している。

ゴーストキッチンビジネスには、不動産や飲食店を持つ企業の参入も相次ぐ。SBEエンターテインメントグループはサイモン・プロパティーズ、ホテル運営のアコーと組み、「C3(Creating Culinary Communities=調理コミュニティーをつくるの略)」というプラットフォームを設立した。C3は今後、小売店の空きスペースや既存の飲食店、ホテルにキッチンを設置する予定だ。

ドアダッシュも、「ドアダッシュ・キッチンズ」というサービスを始めた。データを駆使して宅配の動向を見極めた上で、飲食店やブランドに大型のキッチンのスペースを貸し出している。一方、ローカル・カリナリーは、「ザ・シェフ・バーガー」「エル・タコロコ」「ママ・ローマ」といった宅配専門ブランドの開発に特化したゴーストキッチンを手がけている。

ゴーストキッチンでは予約は不要なだけでなく、不可能でもある。ただ、実店舗がない以上、親しみやすさやブランド忠誠心を醸成しようとしている宅配専門ブランドと同じように、マーケティングではブランドの構築が鍵を握る。例えばローカル・カリナリーの場合、宅配時にステッカーや景品を提供している。

既存の飲食店側は、宅配専門ブランドによって売り上げを奪われ、競争にさらされ、悪夢のような事態になる恐れもある。その一方で、宅配を活用して収入を増やし、うまくやれば利益も伸ばすことができる。そのためには、配送など各種の経費をしっかり分析することが求められるだろう。

いずれにせよ、宅配市場が成長するなか、ゴーストキッチンが今後、ニュースの見出しや投資対象として一段と注目されるのは間違いない。

編集=江戸伸禎

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