ストリーミング音源を「ライブ並みの迫力」に変える英国企業

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録音された音楽とライブ演奏とではサウンドが大きく異なる。ライブ会場では様々なソースから発せられた大音量の音が反響するが、録音された音源は小さなスピーカーを使って聴くことが多く、生演奏のような3次元性はなくサウンドが平坦だ。

ロンドンに本拠を置くスタートアップ「IRIS」は、録音と生演奏のサウンドの差をなくす画期的なソフトウェアを発表した。同社のスマートフォンアプリは、独自開発したアルゴリズムを用いて、録音された音楽に空間性を持たせることができるという。

同社が開発したアルゴリズムは、失われたオーディオ情報を再合成し、ユーザーの脳にライブで聴いているような3次元の音楽体験をさせるという。

「私たちが日常的に利用するストリーミングサービスでは、オーディオファイルが圧縮されており、忠実度が失われている。我々は、ライブ音楽の没入体験を蘇らせることをビジョンに掲げ、2018年にIRISを創業した」とIRISの創業者でCEOのJacobi Anstrutherは語る。

同社のCTOのRob Rengによると、アプリのアルゴリズムは“アクティブ・リスニング”を刺激するという。「IRISのアルゴリズムは、もともと存在しているがロックされたオーディオ情報を検出する。失われた次元をアンロックして分離し、音の位相を反対側の耳に届ける。IRISを起動すると脳が全ての情報を縫い合わせてアンサンブルを完成させようとする」とRengは話す。

Rengによると、アクティブ・リスニングの半分程度はアルゴリズムによって行われるが、残り半分はユーザー自身の脳で行われ、ライブ音楽を聴いているような没入体験が得られるのだという。

「脳は音楽を聴いている間ずっと活性化されており、オーディオの質を高めるだけでなく、神経学的にも利点が多い。重要なのは、音楽がアーティストの意図したものから全く変わっていないことだ。IRISのアルゴリズムは、ストリーミングを構成する多くの異なる音波の位相に影響を与えるだけで、ライブ音楽を聴いているのに近い体験ができる」とRengは話す。

実際、IRISアプリを起動して「アクティブ・リスニング」ボタンを押すと、普段よりも躍動感が増す感じがする。小型のブルートゥーススピーカーやヘッドホンを使っても、アプリを使うと臨場感が増す。
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編集=上田裕資

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