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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

2019 World Series Game 7 - Washington Nationals vs. Houston Astros(Photo by Alex Trautwig/MLB Photos via Getty Images)

MLBのヒューストン・アストロズは、2017年に球団史上初のワールドチャンピオンになったが、その際に犯したとされる組織的な映像解析によるサイン盗み行為に対して、今年に入ってようやく処分が下された。

しかし、MLBを含む野球界は後味の悪さをいまだに激しく引きずっている。それは、「処分が軽すぎないか」という意見が後を絶たないからだ。

MLBは、アストロズのゼネラルマネージャーたちを1年間のサスペンション(謹慎)処分にしたことでなんとか手を打ち、ワールドシリーズ優勝の取り消しというような野球史に大きな改変を残すような事態は避けたかたちだ。とはいえ、シーズン前の話題に乏しい時期でもあり、ファンの間ではこの処分に対して批判の声が上がっている。

賭けは認めるが八百長はやっていない


そんななか、過去のMLBの処分が不公平だったと語気を強めた人間がいる。MLBの最多安打記録や最多試合出場記録を持つ元祖「鉄人」で、「チャーリー・ハッスル」のニックネームを持つ元シンシナティ・レッズのピート・ローズだ。

ローズは、前人未到の最多安打記録を打ち立てた後、1985年から87年のシンシナティ・レッズの選手兼監督時代と監督専任時代に、自分のチームの試合に金を賭け、八百長をやった容疑で、1989年の8月にMLBから永久追放処分を受けていた。

しかし、ローズはレッズの試合に賭けたことは認めているが、賭けのために八百長試合をやった(つまり選手をやりながら賭けをして手を抜いた)とされることについては、けっして認めていない。

今年79歳になるローズは、これまで3回(1997年、2002年、2015年に)、MLBのコミッショナーに処分解除の嘆願書を出してきたが、いずれも却下されている。

ローズのケースで問題となったのは、罪を認めるか認めないかということだった。この2015年の嘆願書却下の判断においても、「本人に悔悛の状況が認められられない以上、永久追放処分を継続するしかない」というのがコミッショナーの判断であった。

これは、アメリカの刑法と仮釈放審査の実態にも、おしなべて共通することだ。重罪で長期刑を受けても、仮釈放のかたちで刑務所から出てくる人間はたくさんいるが、この仮釈放審査会での最も重要で揺るがない点は、「罪にまっすぐに向き合い、悔悛の情を見せているかどうか」という点だ。つまり、この国では、どんなに更生しても、無罪を主張する限りは、絶対に仮釈放されないのだ。

アメリカンフットボールの大スターのO・J・シンプソンが、ラスベガスで強奪事件を起こし、有罪になって収監されたときも、まさにスーパースターが涙ながらに悔悛の情を訴えて、仮釈放を勝ち取っている(このときの仮釈放審議はいまでも動画で見られる)。

なので、実は冤罪が発生したとしても、「それでも私はやってない!」と主張する限り、絶対に刑務所の外に出ることができないという矛盾を抱えている。ローズも、自分の信念を曲げ、八百長をやったことにして謝ってしまえば、おそらくとっくの昔に野球界に復帰できていたはずだ。

しかも、ローズが八百長を犯したかどうかの事実認定も、証拠の評価が法的に行われたわけでもなく、当時の委任を受けた弁護士が作成した、あくまで状況証拠に頼った「ダウド・レポート」なるものによって、陪審員もなければ量刑基準もないなかで、コミッショナーが独断で永久追放を判断したのだ。

文=長野慶太

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