虐待・産後うつから母親を救う、英国発の子育て家庭訪問ボランティア

Photo by Ippei Naoi / Getty Images


利用者が申し込むと、まずオーガナイザーが訪問し、どんなニーズがあるか明らかにします。「預かりなら、ファミリーサポートや行政の一時預かりもある」といった情報を伝え、「どんなことがホームビジターと一緒にできたらいいか」ということを、母親が自分で考えられるようにサポートします。

うまくいけば、週1回2時間ほどの訪問を続けます。オーガナイザーもフォローし、「〇〇できてよかった」「自分にも子どもにも、いい時間だった」「イライラする時間が減った」といった前向きな言葉が出たら、訪問を終えても大丈夫かを確かめ、1か月半ほどで終了します。今は全国30都道府県、106地域に広がりました。ボランティアのホームビジターは、30~70代の2500人がいます。

切れ目ない支援で虐待・産後うつ防止


利用者のニーズは様々です。子育て広場や保育園の下見に一緒に行くこともあれば、「引っ越してきて知り合いがいない」「部屋が片付かなくてイライラする」という母親に寄り添うことも。子どもの発達相談の窓口に、付き添う場合もあります。親類や家族には頼れない人は、多いそうです。

妊産婦の死亡原因で一番多いのは自殺だと2018年、初の全国的な調査で明らかになりました。虐待のニュースも後を絶ちません。産後うつの人には、ホームスタート活動を通して、相談先の情報提供もできるし、信頼関係が生まれれば、母親本人が「相談に行ってみようかな」と前向きに思えるようになります。

父親の支援も増やしたい


2016年には、およそ40地域で産前の訪問を始めました。産前産後と切れ目ない支援ができれば、虐待の予防にもつながります。産前からつながっていると、産後にすぐ利用できます。産後は体調が悪く、申し込みをするのも大変なので、スムーズに出産に寄り添えます。

最近は、高齢の祖父母には頼れない、40代の利用も増えました。外国籍や双子、障害のある子の家庭など、多様なケースに関わります。

父親の利用もあるそうです。母親が入院している家庭やシングルファザー、働きながらまじめに育児をシェアしようとして、くたくたになってしまう父親を支援しています。年配男性のホームビジターが、子どもとの外遊びで活躍することもあります。実際に支援しているのは母親が中心ですが、ホームビジターが家庭に入ることで、父親の育児への理解が深まったり、父親のうつを防いだり、プラスになるため、利用の増加が期待されます。

連載:元新聞記者のダイバーシティ・レポート
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文=なかのかおり

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