FOXのセクハラ訴訟を映画化「スキャンダル」が描く放送局の内幕

『スキャンダル』2月21日(金) TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー(配給:ギャガ) (c) Lions Gate Entertainment Inc.


ニュース放送局の内情が描かれる


映画では、やや年上のグレッチェンをニコール・キッドマンが、メーガンをこの作品のプロデューサーにも名を連ねるシャーリーズ・セロンが演じている。この2人に加えて、マーゴット・ロビーが、映画オリジナルの役柄である、野心にあふれたケイラ・ポスピシルという若い新人キャスターの役で、アカデミー賞の助演女優賞にもノミネートされた。

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 (c) Lions Gate Entertainment Inc.

やや盛りを過ぎたかつてのスターキャスターであるグレッチェン、大統領候補のトランプとさえ互角に渡り合う昇竜の勢いのメーガン、そしてメディアの世界に足を踏み入れたばかりだが美しさを武器に駆け上がろうとするケイラ、この年齢もキャリアも異なる三者三様の女性たちが、メディアを牛耳るCEOのセクハラに対して、どう対処していくかが描かれていく。

3人が、劇中で唯一顔を合わせるシーンがあるのだが、偶然ひとつのエレベーターに乗り合わせた彼女たちは、年長のグレッチェンが「暑いわね」と呟いたくらいで、ほとんど言葉を交わさない。互いの表情を探るような3人の「顔の演技」は、この作品の見どころのひとつかもしれない。

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 (c) Lions Gate Entertainment Inc.

花形キャスターであるメーガンが、狂言回しとなって物語は進行していくのだが、彼女が次々と小気味よく紹介していくFOXニュースの内部事情が面白い。このあたり、「オースティン・パワーズ」シリーズの監督であるジェイ・ローチのテンポ良い演出が冴え渡っている。

脚本もとてもよくできており、これがアカデミー賞の脚本賞にノミネートされなかったのが不思議なくらいだ。ニュース放送局の内幕はもちろんのこと、そこに携わる人間たちのリアルな会話も散りばめられ、かなり綿密なリサーチを重ねたことを窺わせる。

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)で第88回アカデミー賞の脚色賞を受賞したチャールズ・ランドルフが脚本を執筆。これが映画化へのスタートとなったが、メディア王ルパート・マードック率いるFOXニュース側の素早い幕引きとCEOであったロジャー・エイルズの突然の死去で、忘れ去られようとしていた「事件」に、再びスポットを当てるかたちとなった。
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文=稲垣伸寿

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