「同意のない性行為」にNO!レイプの定義を一新するスウェーデンの性犯罪規定とは

左からヴィヴェカ・ロング(スウェーデン司法省上級顧問) 、ヘドヴィク・トロスト氏(スウェーデン検察庁上級法務担当) =スウェーデン大使館提供

性行為に関して「積極的な同意 (Yes)」が無ければ性犯罪として認められる、世界的にも先進的な規定を持つ国があることをご存知だろうか──。つまり、「Yes」だけが同意したということであり、それ以外は「No」と解釈する法律だ。

それは、2018年7月に新たに積極的な同意に基づく性犯罪規定を施行した、スウェーデンだ。このレイプの定義を一新するスウェーデンの法律は、「Yes means Yes」法(性行為同意法)とも呼ばれる。

このスウェーデンの法改正を巡って、「Yes means yes! スウェーデンの性行為同意法がレイプの定義を変える」という公開セミナーが上智大学で開かれ、スウェーデン司法当局の担当者が来日して語った。NGOのヒューマン・ライツ・ナウとスウェーデン大使館の共催で、関心のある学生のほか、女性の地位向上を望む様々な団体のメンバーや有識者たちも多く集まった。

イベントの冒頭で、スウェーデン大使館のスベン・オストベリ参事官は「性行為は自発的であるべきです。スウェーデンにおいても今回の法改正によって、国民たちの考え方も180度変わったように思えます」と挨拶した。その後、ヴィヴェカ・ロング司法省上級顧問、ヘドヴィク・トロスト検察庁上級法務担当らが登壇した。

「性行為は自発的であるべき」というシンプルな結論に至るまで、スウェーデンはどのような経緯を辿ったのか。そしてこの法改正の裏には、どのようなメッセージが込められていたのだろうか。一方、日本の性犯罪に関する刑法ではこの点を保障できない懸念も指摘されている。

日本が「性犯罪法後進国」である実情


日本では2017年に刑法の性犯罪規定が110年ぶりに改正され、3年後である2020年はその見直しの年になっている。厳罰化されたものの、現行法では強制性交の被害にあったとしても、暴行や脅迫、心神喪失などの要件が求められ、泣き寝入りするケースも多いのだ。

現行の日本の法律では、性暴力があったとしても「同意がない」ことや、抵抗するのが著しく困難な状態を意味する「抗拒不能」であることが立証されなければ、性犯罪事件として罰することはできない。主催団体、ヒューマン・ライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、「日本では、昨年3月に性犯罪に関して無罪判決が相次ぎ、社会に衝撃を与えた」ことに言及した。4つのうち3つの事件においては、加害者が被害者に強制的に性行為をしたことは認められていた。
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文=初見真菜

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