0歳からの「お金の話」


筆者も金融機関で働いていたことがあるので、金融機関に勤めるすべての人が悪人であるとは思わない。むしろ、そうでない人のほうが多いだろう。しかし、金融機関に非がないとも思わない。事実、筆者の祖母のもとにも、手数料の高い保険を売りつけにきた保険会社の営業員がいた。このような金融機関に勤める一部の悪意ある人間のために、このような負の循環が起きてしまったのだ。

金融機関の例を出したが、それ以外にも日本では詐欺によって毎年400億円近い金額が騙し取られている。その詐欺には、仮想通貨や未公開株をめぐるものが多いため、日本人にとって「投資」は、より怪しいものになってしまっている。

しかし、これらの例をよく検討してみると、汚いのは「お金」ではなく、「人間」であることに気づくと思う。

親が子どもにしてあげられること


このような経緯があるため、筆者たちの親の世代は、「投資は危ない」とか、「お金は投資で増やすのではなく、労働の対価としてもらうべきだ」と子どもにアドバイスをしてくる人が多い。しかし、そのような意見を聞き過ぎるのはよくない。なぜなら、昔と今では何もかもが違うからだ。

日本という国の成長率も、世界における存在感も違えば、銀行に預けていた場合にもらえる利子の額もまったく違う。普通に仕事をしていれば給料は毎年上がっていき、何も考えずに銀行に預けていても少しずつは利子がつく。そういう時代を過ごしていた人たちと、いまを生きる若者は条件が違うのだ。

厚生労働省が発表した毎月勤労統計(速報)によれば、2019年の現金給与総額(名目賃金)は前年比0.3%減となっており、6年ぶりに前年比でマイナスとなった。賃金の安いパートタイム労働者の比率が下がったからとか、働き方改革で労働時間が減ったからなどという解説も耳にするが、一般労働者の所定内給与でも前年比0.6%増に過ぎない。

もはや給料が毎年上昇していくような環境にある人はそう多くはないのだ。そして、なによりも、現在、日本の労働者の約4割が非正規雇用で、その平均年収は200万円にも届かない。何も考えずに生活をすることは、貧困に陥るリスクを甘んじて受けることになりかねない。

そのような現実があるなかで、筆者の世代が、親として子どもにしてあげられることは何か。それは、頭ごなしにお金を悪者にせず、正しい倫理観を持って「お金」と付き合っていくことの重要性を説くことだろう。

確かに、お金には一種の魔力があり、それがなくておかしくなる人もいれば、あってもおかしくなる人もいる。実際に筆者も両方のケースを目にしてきた。しかし、それは倫理観さえあれば避けられることなのだ。

親として、子どもには幼少期から、正しい倫理観やお金との正しい付き合い方を教えてあげることを心掛けよう。それは、けっして難しい用語や数式を教えることではなく、日頃から極力コミュニケーションを取り、一緒に買い物をしたり、新聞と一緒に届けられる広告を見たりしながら、時折、お金の話をしていくだけでもいいだろう。あまり難しいことは考えず、まずは子どもと「お金」の話を包み隠さずしてみてほしい。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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