失業が男性のメンタルヘルスに与える影響

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広範な影響


労働市場からの脱落がもたらす影響は、欧米諸国で非常にはっきりと現れている。現在世界中でポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭しているが、オランダ・ティルブルフ大学が最近発表した論文では、こうした環境を作り上げる上で失業が果たした役割が浮き彫りとなっている。

論文では、2008年のグレートリセッション(大不況)の影響を、失業率の上昇と欧米諸国における移民の増加の両視点から分析し、現在のポピュリズム政治の中で失業が果たす役割を調べた。結果、経済面での懸念が原動力となったポピュリズムと、文化面での懸念によるポピュリズムには違いがあることが示された。論文では米国に焦点を当て、現在の政治状況を08年の大不況と14年の移民危機の両視点から見ている。

ポピュリズムの2つの柱


分析結果によると、グレートリセッション中に失業した人は左派ポピュリストであるバーニー・サンダースに投票する確率が非常に高かったが、08年より前に失業していた人はヒラリー・クリントンを支持する確率が高かった。対照的に、14年に起きた移民流入の影響を特に大きく受けた地域の住民は、ドナルド・トランプに投票する確率が非常に高かった。

論文は「ブレグジット(英国の欧州連合離脱)や、欧州で相次ぐ極左・極右政党の台頭、ドナルド・トランプの大統領就任、2016年米大統領選でのバーニー・サンダースの人気は、ポピュリズムの台頭を示している。この論文では、ポピュリズム台頭の原動力となったのが経済不安なのか、それとも文化的不安だったのかについて調べた」と述べている。

これを踏まえると、多くの男性が労働市場から締め出されていることによる社会的影響は大きい。一方、こうした人の多くが支持するポピュリスト系リーダーたちが、支持者らを助ける意思や能力を本当に持っているかどうかははっきりしない。

主流派の政治家らがこの大きな有権者層の支持を取り戻したいなら、労働市場から締め出された人々が再就職できるよう支援を強化することが非常に重要だ。そうすれば、そうした人々と社会一般から感謝されることだろう。

編集=遠藤宗生

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