その「ブランド帝国」を一代で築き上げたのが、ベルナール・アルノー会長兼CEO(70)だ。総資産額11兆2000億円。そんな伝説的経営者である彼の「経営、そして人生」を成功に導く哲学と、その手腕とは。2月25日発売のフォーブス ジャパン2020年4月号に掲載するインタビューを、一部抜粋でお届けする。
フォーブス ジャパン 2020年3月号の表紙を飾ったベルナール・アルノー
「まだ始まったばかりですよ」
ベルナール・アルノー、70歳。ルイ・ヴィトンからティファニーまで、70以上のハイブランドを傘下にもつ複合企業モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のCEOであり、その苛烈なM&A(合併・買収)戦略から「カシミアを着た狼」とも呼ばれるラグジュアリー界の覇者である。
アルノーはLVMHグループのブランドの状況を、特にこのコングロマリットのドル箱であるルイ・ヴィトンの状況を、過剰なほどつぶさに追っている。アナリストたちによると、ヴィトンはLVMHの2018年の収益540億ドルの4分の1近くを、利益に至っては最大47%を占める。中国人顧客の強力な購買力も手伝い、ヴィトンが牽引するLVMHの株価はこの4年で3倍近くに跳ね上がった。
家族とともにグループの株式の47%を保有するアルノーの資産額は現在1020億ドル。16年時から680億ドル増加した。アルノーはいまや、ジェフ・ベゾス(資産額1100億ドル)とビル・ゲイツ(同1060億ドル)に次ぐ、地球上で3番目に裕福な資産家だ。
アルノーはまだまだ稼ぐつもりだ。最新の買収案件は、182年の歴史をもつ米国のジュエリーブランド、ティファニー。19年11月に行われた162億ドルでの買収は、アルノー史上最大規模となった。「マイクロソフトに比べれば、私たちはまだ小さなものです」とアルノーはさらりと言う。確かに、LVMHの2140億ドルという時価総額は、ソフトウェアの巨人の1.1兆ドルには及ばない。「まだ始まったばかりですよ」