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乳がんという「転機」


残念すぎる郵便配達員


夕方になって、「やってみよう」の興奮が落ち着いたころに、郵便局の配達員が、マンションの1階エントランスのインターホンを鳴らした。義理の母からのお見舞いが、書留で再配達になっていたのを、私の退院にあわせて夫が手配してくれていた。

インターホンは2回鳴ったが、傷が痛くてすぐに立てないし、歩けないしで、なかなか受話器がとれなかった。なんとかエントランスを開けると、配達員がエレベーターで上がってきて、自宅のインターホンを鳴らした。

ちょっと前から歩き出す準備をしているが、やはり走っていくことはできない。いつもの何倍も時間がかかった。で、ようやくたどり着いてドアを開けたら開口一番、

「もっと早く出てくれませんかね」

え? なに?

この人は、私に、出てくるのが遅いと面と向かって文句を言っているのだ。最悪のイヤイヤな表情で。カラダが弱っているので反論する気にもならず、無言でハンコを押した。

もし、脚の不自由なおばあさんだったら、この人はどうするんだろう。こんな失礼な、論外な人を許す郵便局の指導体制は、どうなっているんだろう。再配達にも、出るのが遅いのにも理由があるのに、なんで一方的に文句を言われなければならないんだろう。悲しくなる。

心が弱っているのか、思いっきり傷ついてしまった。このままだと体に悪いので、人生初のクレーム電話をした。再配達の紙に載っていた配達員の名前をフルネームで読み上げて、一部始終を話したら、さすがに電話口で対応してくれた人は平謝りだった。

本当は郵便局長と直接お話したいところだが、指導体制も含め、よく考えてくださいとお伝えください、とお願いして電話を切った。

まさか目の前の人の胸に20cm以上の傷があるなんて、しかも退院直後だなんて、想像できないだろうけど。弱者の敵は許さない。ふざけんな。

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連載「乳がんという『転機』」。筆者は電通 チーフ・ソリューション・ディレクターでForbes JAPANオフィシャルコラムニストの北風祐子さん。

初動から立ち直るまでのブログ的記録。11人に1人が乳がんになる時代、大親友がたまたま医師だったおかげで筆者が知ることができたポイントを、乳がんの不安のある女性たちやその家族に広く共有し、お役に立てていただけたらと考えています。

連載はこちら>>

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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