ビジネス

2020.02.23

ミラノから欧州市場へ。日本の発信プラットフォームを仕掛ける若き2人の狙い|後編

「TENOHA MILANO」の現地スタッフと打ち合わせする菊池大樹代表(左)ら


TENOHA MILANO
階段で登った2階の席もある。コワーキングスペースも含めて会員登録者数は約200人に上る

また「TENOHA MILANO」では、企業から頼まれたわけではないが、「日本」を発信する拠点として、設備にも細やかな工夫をしている。オフィススペースではリコーの複合機を置いたり、TOTOのトイレを使ったり。品質の高い日本製品を置くことで、ショールームのように導入の参考にする現地企業も出ているそうだ。

さらに入居者のなかから、「TENOHA MILANO」のショップを活用し、ポップアップショップを展開する人も出てきた。オンライン上で展開する、韓国人デザイナーがミラノで始めたアクセサリーブランド「gemma alus(ジェンマ アルス)」だ。クリエイティブ・ディレクターが、VOGUE ITALIAの「200 Emerging Designer」の1人に選出されるなど、注目されているブランドだという。

TENOHA MILANO
TENOHA MILANOで開かれた「gemma alus」のポップアップショップ

この地区は、ミラノコレクションやミラノサローネなど年間を通じて、国内外からファッションやデザインへの感度が高い人が集まる場所でもある。「TENOHA MILANO」は、そんな人たちからも「憧れ」の対象にもなりつつある。

ファッション業界のニーズにも応える「大空間」へ


「ここが最後になります」と、オフィススペースに続いて案内された先には、驚きの大空間が現れた。

TENOHA MILANO
巨大な空間のイベントスペース。活用方法は多様だ

1100平方メートルのイベンストスペースだ。ファッションブランドによるランウェイやパーティのほか、ナイキのヨガイベントやマツダの新型モデルの発表会など、変幻自在の空間として活用されている。

2019年にはミラノサローネに合わせて、佐藤オオキ率いるデザインオフィス「nendo」が空調メーカー「ダイキン」とコラボレーションしてデザインした作品「breeze of light」が展示された。会場全体に1万7000本もの偏光フィルムでつくられた花型の装置が敷き詰められ、光で風のような動きを体感できるインスタレーションが話題になった。5日間で1万5000人が訪れ、イタリアでは珍しく4時間待ちの行列ができたという。

イベントスペースのほかにも、1日単位で借りられるポップアップスペース(48平方メートル)もあり、筆者が訪れた時は、イギリス発の雑誌「MONOCLE(モノクル)」による4カ月間限定のショップが開かれており、「TENOHA MILANO」に併設して新しい店舗がオープンしているように見えた。


ファッションショーで活用されたイベントスペース。多くのメディアやファッション関係者にも注目されている(提供写真)
次ページ > 欧州進出のリスク回避。支援の強みとは?

文=督あかり 写真=Christian Tartarello

ForbesBrandVoice

人気記事