すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う

photo by KEI OKANO

東洋と西洋の芸術界の架け橋として、日本ではなかなか見られない国際的な現代アーティストを紹介している銀座のアートギャラリーTHE CLUBは、現在女性アーティストのみの企画展「all the woman. in me. are tired.―すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。―」を開催している。

ゲストキュレーションを担当したジャスミン・ワヒはニューヨークを拠点とするキュレーターであり、社会活動家。芸術を通して社会問題を提起する彼女が焦点を当てているのは歴史的、集団的に疎外されてきた人々であり、女性だ。

今までにないような大きな脚光を浴びてきている女性アーティスト達


来日前に彼女が50人のアーティスト達と手掛けたのは「中絶は正当の権利だーAbortion is Normal」という緊急アートショー。

トランプ政権下のアメリカで中絶を制限する州法に抗議し、中絶の選択の正当性を要求するボランティアアートショーはメディアの注目を集め大きな反応を引き起こした。精力的にこうした社会活動にアーティストの仲間達と励むワヒはニューヨークを拠点とするアメリカの進歩主義の中心にいる人物と言えるだろう。

彼女が日本で初めて手がけたキュレーションに込めた思いを聞いた。

グローバル社会における次世代のフェミニズム


インド系のルーツを持つワヒとTHE CLUBマネージングディレクターの山下有佳子は共にアジア人のアイデンティティを持ちながら欧米のアート業界で働き、現代社会における性的、人種的差別に疑問を感じた。

この共通の経験により展覧会のテーマとした「交差性フェミニズム」は、白人の中産階級の女性達の「元来のフェミニズム」を是正する概念だ。これまでのフェミニズムの運動では、異なる社会的背景を持つ女性達が必ずしも救われていないと指摘している。本展覧会は、多種多様な文化的背景とアイデンティティを持つ8人の女性アーティストの作品を展示することにより、この考えを反映している。


ジャスミン・ワヒ

また、世界中の多くの女性を悩ませている歴史的抑圧とそれに伴う慢性的な疲労のなかで、本展覧会のアーティスト達は「女性が今を強く生き抜く」方法を模索している。そして、セクシュアリティとセンシュアリティに視点をおくことで、フェミニズムのより現代的な考えを表現している。

「世界中で抑制されてきた女性のセクシュアリティ。女性らしさを抑制し男性的に振る舞うフェミニズムの波を超え、女性は今、自分らしい性的表現の自由を手に入れたのではないか」とワヒは語る。
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文=Elisa Ito 写真=KEI OKANO(Installation shots)

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