すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う

photo by KEI OKANO


今こそ女性アーティストに投資すべき? 


キュレーターになる以前オークションハウスや多数のギャラリーに勤めアート業界の商業サイドにいたワヒは「アート市場の側面から見ても女性アーティストへの投資は好ましい」という。

「今起こっていることは、キャリアの早い段階で注目されていなかった年配の女性アーティストが、彼女達に相応しい評価を得ていることです。例えば、おそらく本展覧会で最も認知度の高いアーティスト、マリリン・ミンター(72)はその作品の過激な性的描写のため、とても長い間アート界から締め出されてきました。 70年代に男性が彼女のような作品を作成していたら賞賛されていたでしょうが、当時女性がそのように官能性とセクシュアリティを表現することは受け入れられませんでした。辛い経験ですが、遅れた評価も歓迎ですね」



アート市場を測定するサザビーズのメイモーゼインデックスの新しい数字は、女性の作品が実際により良い投資であることを示唆している。 2012年から2018年までのリピートセールスの分析では、女性アーティストの作品の価値が男性アーティストの作品よりも大幅に増加した。

しかしこの調査の対象は本当に成功した女性アーティストだけであることを考慮するべきだ。女性アーティストの作品は、オークションの世界(セカンダリーマーケット)ではまだまだ少数に限られている。

「本来女性アーティストを『女性アーティスト』として分類するのは理想的ではなく、単に『アーティスト』として位置づけたいものだ」とワヒは語る。

将来性に満ちた女性アーティストの認識度を高める彼女の活動はそこまでに到る第一歩だ。心惹かれる女性アーティストを見つけ、キャリアを応援してみたいものだ。そのメリットは財政的なものを超えるかもしれない。


ジャスミン・ワヒ◎キュレーター、アクティビスト、TEDx講演者、さらには Project for Empty Spaceの設立者と様々な顔を持つジャスミン・ワヒの活動は、交差性フェミニズムの視点を通じて、社会的言説に潜む複雑な二項対立の構造、多角的な文化的アイデンティティといった課題に取り組んでいる。 MFA (美術学修士)を取得したニューヨーク美術大学では物語性と著者性について学際的な視点からの研究を行った。Project for Empty Space を運営し、インデ ィペンデント・キュレーターとして国際展を手掛ける傍ら、ワヒは School of Visual Arts の教授として教育に関わり、South Asian Women’s Creative Collective(SAWCC)の役員も務めた。ワヒの作品は Wall Street Journal, Vogue, Hyperallergic, ARTNews など数多くのメディアに取り上げられている。現在は愛犬のモモと共にニューヨークのブルックリンを拠点としている。

【イベント情報】
“all the women in me are tired” ―すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。―
THE CLUB Ginza Six 6F 銀座蔦屋書店内(東京都中央区銀座6丁目10-1) *3月5日まで開催

THE CLUB
http://theclub.tokyo/ja/exhibitions/

文=Elisa Ito 写真=KEI OKANO(Installation shots)

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