日本の産業界にデジタルトランスフォーメーションを ブロックチェーンで挑む新たな王道

LayerX代表取締役CEO 福島良典

「Forbes JAPAN」の起業家ランキング特集にて、毎年掲載している「日本のスタートアップ大図鑑」。国内有数のベンチャー投資家約50人にアンケート取材を行い、2020年に注目するスタートアップについて200社を一挙掲載。今回、200社の中から特に注目すべき企業を3社、ピックアップした。「ソフトウエア×リアル産業」の領域のデジタルトランスフォーメーションを支援するLayerX。


福島良典は2019年、新たな挑戦に踏み出した。東京大学大学院在学中の12年11月に創業した、ニュースアプリ大手グノシーの取締役を退任。連結子会社で18年8月に設立したブロックチェーン関連事業を行うLayerXのMBO(経営陣が参加する買収)を行ったのだ。

これまでの「Power to the people」の世界から、より大きなインパクトを生む「Power to the Enterprise」の世界へ。彼が次に目指すのは、「日本の産業界の生産性をソフトウェアテクノロジーで改善する」ことだ。

福島はグノシー創業時から7年間、「スマートフォンx機械学習」という領域に張り、機械学習の力でメディアを作り、「人々が手軽に情報にアクセスできるようにする」ことに賭けてきた。

「創業当時は、スマートフォンが普及する中で、アプリケーションにゲームなどが多く、『おもちゃ』だと思われていた時期。グノシーをはじめ、メルカリやスマートニュース、マネーフォワードなど、生活のインフラになると事業を起こした会社がこの7、8年成長していった。グノシーを経営していく中で思ったのは、『正しい市場やトレンド、概念に正しく張るのが、いかに大事か』ということ」(福島)

今後、福島が張ろうとしているのが、「ソフトウエアxリアル産業」の領域。ブロックチェーン技術を基軸に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援することだ。これまでの10年間で広告領域とコマース領域がソフトウェアに呑み込まれたように、今後10年は金融、不動産、物流など「重厚長大な、リアル産業」に広がっていくと見据えている。

LayerXは設立以降、銀行、証券、保険といった金融機関や事業会社向けにソフトウェアのライセンスビジネスおよびそれを活用した共同事業を行っている。18年に日本マイクロソフト、19年11月には三菱フィナンシャル・グループとの協業をすでに発表し、未発表のプロジェクトも多く抱え、すでに自走できるくらいのキャッシュフローを事業から生み出しているという。

「グノシーの登場で、さまざまな産業領域に機械学習が必要だというトレンドを作れた。今後は、LayerXでなければできないインパクトを与えたい。それが『新しい王道』になると思いますから」


福島良典◎LayerX代表取締役CEO。東京大学大学院工学系研究科卒。2012年、大学院在学中にグノシーを創業、代表取締役に就任。18年にLayerXを創業。

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文=山本智之 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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