周囲に埋没するな。日本人女優がブロードウェイで成功した理由

由水 南

世界には、日本を飛び出し、自身の力でセルフブランディングして成功した日本人女性の起業家やアーティストたちが大勢います。私はニューヨークと東京を拠点に「国際イメージコンサルタント」として仕事をするなかで、そうした方々と多く出会いました。この連載では、そのような女性たちにスポットを当て、海外で成功するためのブランディングのアイデアや、自身の見せ方のヒントを探っていきたいと思います。

今回、取り上げるのは、世界中の才能ある俳優が集うブロードウェイにおいて、アジア人はアジア人役にしかキャスティングされないという厚い壁を打ち破り、グローバルに活躍する日本人女性、由水南(ゆうすい・みなみ)さんです。

由水さんは、石川県生まれ。幼少期に観たミュージカル「回転木馬」に感激し、高校卒業後にアメリカ・ニュージャージー州のモントクレア州立大学演劇科へ入学します。その後、演劇学校「The American Musical and Dramatic Academy」に編入。ブロードウェイの舞台で輝くことを夢見て、オーディションに明け暮れる日々を送っていました。

彼女が身を置くのは、誰もが知るエンターテインメントの聖地ニューヨーク。要求されるレベルは非常に高く、演技力だけでなく、俳優のオリジナリティをいかに演技に昇華できるかが求められます。数カ国語を話せる人も珍しくなく、そのうえ「曲芸ができます」「炎を飲み込めます」など、個性的な武器をもつ人たちの中から、数少ない役を勝ち取らなければならない世界です。

そんな厳しい環境のなかで、由水さんは数えきれないほどのオーディションを受け、演出家からの指摘や高く評価されたパフォーマンスなどをノートに書きとめていきました。

「周りと自分とを比較しながら競争ルールに巻き込まれていくのではなく、逆転の発想ができるゲームチェンジャーとして、自分ならではの個性を追求することに専念しました」

とはいえ、その道のりは容易ではありませんでした。演技力と語学力はもちろんのこと、ブロードウェイの舞台に立つためには、「エクイティ(全米俳優組合)」と呼ばれる俳優組合に所属しなければなりません。そのためには、永住権が必要です。由水さんはアーティストビザを持っていたものの、永住権は取得できず、2007年に日本へ戻らざるを得なくなりました。

帰国後に入団した劇団四季では、ニューヨーク仕込みの演技力が認められ、入団後「ウィキッド」「美女と野獣」「鹿鳴館」に出演。さらには、通訳やブロードウェイ作品の翻訳も務めながら、たった1年で演出助手を任せられるようになりました。
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文=安積陽子

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