対コロナウイルスの新薬開発 イノベーションを促進するきっかけ

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日本のリーダーシップを高めるには


ワクチンプログラムの多くは、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)と提携しています。日本政府は、CEPIの設立において、ノルウェー、英国、ドイツ、カナダ、エチオピア、オーストラリア、ビル&メリンダゲイツ財団、ウェルカムトラストと並び、創設者の一員として関与しています。

また、CEPIは、世界初のR&Dに特化した官民パートナーシップ基金として日本で設立された公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)に次ぐ、世界で2番目のR&Dに特化した官民パートナーシップ基金として設立されました。CEPIとGHITの両ファンドとも、R&Dパートナーシップを通じて感染症の新薬の研究開発を進めています。

しかし、R&Dパートナーシップは、これら公衆衛生の領域に限定されるわけではありません。実際、過去20年間に承認された新薬の大半は、バイオベンチャー企業とのパートナーシップの成果です(*6)。これらバイオベンチャー企業は、製薬会社、学術機関、ベンチャーキャピタル及び政府と連携しながら、資金を集め、新薬を開発し、患者へ新たなイノベーションを提供しています。

R&Dパートナーシップは、グローバリゼーションとITの進化によってさらに推進される一方、文化や専門領域の違いから生じる壁や、専門領域内での競合上の観点から、コミュニケーションや協働が困難になる可能性があります。しかし、日本の製薬会社と政府間おいては、CEPIとGHITが潤滑油となり、世界的にリーダーシップを発揮しています。

今後、日本は国内外のバイオベンチャーとのR&Dパートナーシップを進め、感染症以外でもリーダーシップを高めることができます。その結果として、日本発のサイエンスとイノベーションを世界中の患者の方々に届けることができるでしょう。


1. DiMasi J., Grabowski H., Hansen R. (2016) Innovation in the pharmaceutical industry: New estimates of R&D costs. Journal of Health Economics. 47.
2. Prasad V, Mailankody S. Research and Development Spending to Bring a Single Cancer Drug to Market and Revenues After Approval. JAMA Intern Med. 2017;177(11):1569–1575.
3. The Cost Of Developing Drugs Is Insane. That Paper That Says Otherwise Is Insanely Bad
4. Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003
5. Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China
6. HBM Partners Report Trends in FDA New Drug Approvals

文=BT スリングスビー

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