対コロナウイルスの新薬開発 イノベーションを促進するきっかけ

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これは、いわゆる社外と協働したR&D、オープンイノベーション、またR&D Partnership(研究開発のパートナーシップ)と言われる協力体制です。このR&Dパートナーシップにより、今後また、今回のようなウイルスの流行が起きたとしても、より迅速に新薬を患者の方々に届けることができるようになるでしょう。

これまで、重要急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱の流行を受け、それぞれ独自の方法でより良い協働や、より生産的なR&Dパートナーシップが実践されてきました。

世界中で774人の死者を出したSARSや(*4)、2012年のMERSコロナウイルス(MERS-CoV)の発生により、多種多様な研究ツール、ワクチンプラットフォーム、診断薬、潜在的な治療薬の開発が活発になり、コロナウイルスに関する生物学的また科学的見解が導かれました。

現在これらは、新型コロナウイルスの研究に活かされています。これらの研究の進展と、ジカ熱やエボラ出血熱、チクングニア熱を引き起こすウイルスの発生から学んだ教訓が相まって、流行を抑えるための多面的なアプローチが可能となりました。これはまさに、R&Dパートナーシップの証であると言えます。


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この1カ月余りで、中国は既に新型ウイルスに対して30の化合物の試験を承認しています。そのなかで、とくに重要な化合物の1つは、エボラ出血熱やSARSなどの感染症を対象とした、Gilead Sciences社の新しい(実験的な)抗ウイルス薬である「Remdesivir」です。北京に本拠地を置く中日友好病院の医療チームが、この抗ウイルス薬の治療効果について治験を行っています(*5)。

ワクチンの開発も同様に進行中です。米国に拠点を置くバイオテクノロジー企業Modernaは、来月にも健常者を対象とした第1相臨床試験を開始する予定です。また、ジョンソン・エンド・ジョンソンも、ジカ熱やRSウイルス感染症、HIV感染症に対する予防ワクチン候補の創製に使用されたものと同じAdVacおよびPER.C6テクノロジーを活用し、生産規模や製造能力を拡大する計画で、第1相臨床試験を開始することを検討しています。

その他のワクチン開発プログラムには、グラクソ・スミスクライン、Inovio Pharmaceuticals、クイーンズランド大学のプログラムが挙げられます。そして、これらの全プログラムは、すべてがR&Dパートナーシップであるというユニークな共通点を持っています。
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文=BT スリングスビー

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