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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Photo by Anadolu Agency / Getty Images

新型コロナウイルスに震撼するアメリカで、2月上旬、ニューヨークの地下鉄通路でマスクをかけたアジア人女性が、突然男性の乗客から暴行を受けたという事件を、ニューズウィーク誌が報じた。

その時の動画が拡散しており、暴行の事実は間違いがない。前後の事情はよくわからないものの、同誌は、ニューヨーク市警が、新型コロナウイルスに関連したヘイトクライムだと疑っていると伝えている。

文字通り人種のるつぼであるニューヨークでは、アジア人だからと言って暴行を突然受けるようなヘイトクライムはめったに聞いたことがない。従って、新型コロナウイルスに対する脅威が根本にあり、毎日の報道で蓄積された恐怖心に、マスクが火をつけて衝動的な暴力を呼び込んだと受け取るのが正しそうだ。

しかし、長いこと、マスクをする文化が浸透したアジア人、とりわけ私たち日本人にとって、マスクによって憎しみが煽られるというニュースはとてもショッキングだ。

マスクとは東洋の習慣


かつて、筆者がサンフランシスコの山火事を取り上げたコラムでも記したように、アメリカにおいてマスクの着用はきわめて非日常的な光景だ。

日本と同様、花粉症に悩む人たちはたくさんいるが、彼らは断固として薬による処方に頼っており、マスクをつけるなどということなど発想したこともない。ドラッグストアのマスクコーナーも日本の10分の1もない。

マスクを見るのは、病院の手術室か、塵が吹き上げる工事現場くらいのものだ。実はアメリカ人は、基本的にマスクを信じていないのだ。しかし、その効果を信じないとはどういうことなのかと、彼らの考えは全く理解できない。ただ文化差違としか答えがないのは実に寂しい。

ネットを見ると、マスクの効用をきちんと紹介している医者のコラムがニューヨーク・タイムズ(2018年)に載っていたりするはする。一方、それは裏を返せば、ニューヨーク・タイムズが取り上げるほど、それ自体がニュースなのである。今回の新型コロナの報道でも、テレビでは、「マスクはウイルスにかかった人が周りへの配慮でするもので、予防的につけるものではない」とキャスターははっきりと言い切った。

気になっていろいろ調べてみたが、マスクの効用について、英文で科学的に取り上げた論文はなかなか見当たらなかった。つまり、マスクとは東洋の習慣、または迷信でしかないという位置づけなのかと、このギャップを悩ましく理解した。

現在、新型コロナウイルスは、アメリカでもトップニュースであるにもかかわらず、私の周りでマスクをしているアメリカ人は1人としていない。マスクの話をしても、半ば頷いた顔はするものの、じゃあ買いに行こうという人はいない。

文=長野 慶太

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