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2020.02.20

ジェットスーツや車椅子まで。クラウドの波と3Dプリンターはものづくりの現場をどう変えているか?

SOLIDWORKSのCEO、Gian Paolo Bassi

クラウドの波は、コンピュータを利用した設計のためのCADソフトウェアにも広がっている。3D CADで最大手の「SOLIDWORKS」、それに「CATIA」などを擁するDassault Systemesも、クラウドに用意したプラットフォームで製品や機能を統合する戦略に舵を切っている。クラウドはデザインの現場をどう変えるのだろうか。

設計現場はクラウドでどう変わるのか?


同社が2月中旬に米テネシー州ナッシュビルで開催した年次イベント「3DEXPERIENCE World 2020」では、タブレットやスマートフォンを使ったデモが見られた。これまでのCADソフトといえばワークステーションで固定されたイメージだったが、クラウドによりCADの世界でも「いつでも・どこでも」が実現しつつある。

SOLIDWORKSは汎用の3D CADで、この分野では51%のシェアを持つ。Tesla、BMW、トヨタ自動車などの自動車からコンシューマー製品、医療機器、航空宇宙など産業系を得意とし、ユーザーは600万人以上。個人のデザイナーや趣味で利用する人も多いようだ。

今年のイベントの最大のテーマは「製品からプラットフォームへ」だ。2019年に打ち出したプラットフォーム戦略を、今年は顧客の事例とともに説明した。具体的には、「3DEXPERIENCE」というDassaultのプラットフォームにSOLIDWORKSデスクトップを統合する「3DEXPERIENCE WORKS」として提供する。

SOLIDWORKSのCEO、Gian Paolo Bassiは「これまでは製品があり、ファイルがあり、顧客はメールなどでやりとりをしていたが、これからはプラットフォームから製品を使い、ファイルを保存し、プラットフォーム上でコラボレーションする」と説明する。

会期中のデモでは、プラットフォームにより作業がどのように変わるのかを見せた。まず、3DEXPERIENCEのソーシャル機能を使ってデザイナーがアイディアを投稿し、メンバー間でアイディアについてディスカッションが進み、プロジェクトが立ち上がる。プロジェクトのメンバーに役割に応じた権限を与えた上で、プラットフォーム上でのコラボレーションが進む。SOLIDWORKSを使って全体のデザインの作成、部品の設計などを行いプラットフォームに保存すると、プロジェクトのメンバーが他のデバイスからアクセスしてコメントしたり、改善のためのヒントとなる情報をシェアする。

Webベースのモデリングツールを使って、デザイナーが出張先からタブレットを使ってモデルを作成することも行った。コラボレーションだけではない。完成したデザインをシミュレーションするテスト段階でも、素材や形状をアドバイスする機能を利用したり、一部作業の自動化などAIもプラットフォームにより実現している。全体として、コラボレーションが促進され改善のサイクルを効率化できるという様子を見せた。

「これからは個別の製品よりも、統合と自動化が重要になる。統合と自動化は、プラットフォームがあるからこそ実現できる」とBassiは語る。

一方で、オンプレミスソフトウェアの共通課題である、ユーザーのクラウドへの移行をどう促進するのかという課題も待ち受けている。Bassiは、SOLIDWORKS単体について「現時点で中断する計画はない」と強調した。
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文・写真=末岡洋子

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