3DCADと3Dプリンターがものづくりを変える
3D CADと相性が良いのが3Dプリンターだ。これまで何かを作りたいと思っても、ある程度の設備や資金が必要だった。しかし、3Dプリンターがものづくりの敷居を低くしている。イベントでは、既存の企業に属していない起業家たちも多く参加していた。
その一社が、映画「アイアンマン(Iron Man)」のように空を飛ぶことができるジェットスーツを開発しているイギリスのスタートアップ、Gravity Industoriesだ。SOLIDWORKSと3Dプリンターで、新しいものづくりを実践している。
「最小限の機器を体に装着して空を飛ぶことができないか」──創業者Richard Browningのそんな思いで2017年に創業したGravity、DIYショップから買ってきたアルミ押出加工でタービン1台を体につけるところから実験を開始し、わずか2年でジェットスーツの作成までこぎつけた。その背景には、「完璧なデザインができるのを待って、アイディアをテストするのではなく、手に入る素材を使ってできるだけ早くイテレートする」というGravityの精神があるとGravityのSam Rogers(アディティブ・デザイン担当)は説明する。
新しいものづくりを見せたGRAVITYのSam Rogers
車椅子でもハロウィーンを楽しみたい──脊髄性筋萎縮症(SMA)の子供を持つRyan Weimerが夫人と開始したのがMagic Wheelchairだ。海賊船、ドラゴン、宇宙船など子供たちがのりたい車椅子、着てみたいコスチュームを作成するのに、3DEXPERIENCEプラットフォームを使っている。Dassault Systemesはツールや場所(ラボ)を提供するだけでなく、従業員の参加を通じてプロジェクトを支援している。イベント中、「美女と野獣」のティーセットと映画「STAR WARS」に出てくるようなスピーダーバイクの2つの車椅子が贈られた。
これまで作成したマジックウィールチェアーの数は226を数える。子供たちの夢に合わせた完全なオリジナルであることから、3Dプリンターは重要だという。全て無料で子供たちに贈られる上、作成はボランティアとスポンサーに頼っていることから、「デザイナー、金属製作など専門スキルを持つ技師、メーカーなどのコミュニティがとても重要」とMagic Wheelchairの執行ディレクター、Christine Getmanは語る。自身もSMAであるGetmanは、「コスチュームを通じて会話が生まれることでインクルージョンにつながる」と述べる。
3Dプリンターで作成した最新のティーセット(後部の盾を車椅子に装着する)を紹介するMagic WheelchairのChristine Getman
国際展開を始めたところだが、問題の1つがメーカースペースと呼ぶ作業場。イベントでは、学校の教師の妻をもち、メーカースペースを3カ所知っているというインドのエンジニアと知り合い、インドでの展開に目処が立ちそうだとGetmanは目を輝かせた。