中国「5G整備」に甚大な打撃、武漢の光ファイバー工場停止で

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台北本拠のリサーチ企業TrendForceが、新型コロナウイルスの感染拡大が、中国のテック業界に及ぼす影響についてのレポートを発表した。同社の分析では、中国が近年最も力を注ぐ、5Gネットワーク関連の企業が多大な打撃を受ける可能性があるという。

新型コロナウイルスの発生源とされる武漢市は、中国のシリコンバレーと呼ばれる北京の中関村に次ぐ、国家レベルのハイテク産業開発区だ。武漢市には光ファイバー関連の大手が製造拠点を置き、「オプティックバレー(光谷)」とも呼ばれている。

武漢市には中国最大の光ファイバーケーブル製造企業の長飛光繊光纜(YOFC)や、通信ソフト企業の烽火通信(Fiber Home)、光学コンポーネント大手のAccelinkなどが拠点を構えている。

TrendForceの試算では、これらの大手の光ファイバーの製造キャパシティは、世界の25%を占めている。5Gのベースステーションの構築には、高品質な光ファイバーが大量に必要になる。武漢市を震源とする新型肺炎の感染拡大により、中国の5Gネットワークの整備が大幅に遅延することも予想される。

加えて、感染拡大の影響により中国の通信大手らの5G関連設備の建設や契約に向けた動きも停滞している。5Gのインフラ整備の遅れに、スマートフォンの製造の遅延が重なり、中国企業による5G対応スマホの出荷台数は予想を下回ることになると、TrendForceは述べている。

感染拡大の影響がさらに大きいのが、労働集約型産業であるスマートフォンの製造だ。TrendForceによると、今年第1四半期の中国でのスマホの製造台数は、前年同期比で12%減になり、過去5年で最低の製造台数になる見通しだ。

「サーモメーター」の製造に注力する企業も


一方で、スマートウォッチやTWSイヤホンなどのウェアラブル機器の製造も大きなダメージを受けることになる。これらのデバイスの多くは広東省や江蘇省、浙江省の工場で生産されている。2月中旬には工場の再開が見込まれるが、その後も製造の遅延は続きそうだ。

ただし、アップルウォッチの需要が高まる年末までには製造キャパシティは回復する見通しで、アップルのウェアラブル部門が被る打撃は比較的軽微なものになるとTrendForceは述べている。

もう1つ注目すべきカテゴリが、IoTデバイス関連の動向だ。監視ビデオデバイス大手のHikvisionやDahua Technologyらは現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、体温を測定するサーモメーターの生産に注力している。TrendForceは今後、これらの2社が監視ビデオ機器の製造を外部にアウトソースする可能性があると指摘した。

編集=上田裕資

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