薄毛治療に光明
もともと骨粗しょう症の治療薬として開発された薬が、男女を問わず薄毛に悩む人の治療にも効果があることが研究によって明らかになった。
現在、販売されている薄毛治療薬はミノキシジルやフィナステライドなど数種類しかなく、いずれも男性型脱毛の治療を目的にしている。そうした治療薬には効果がないと訴える患者も少なくないし、性的能力や性的欲望の衰えという副作用を伴う場合もある。
幸いにも、英国のマンチェスター大学の最近の研究結果によれば、今後は豊かな頭髪を維持するために性の喜びを犠牲にする必要はなくなるかもしれない。研究チームは、植毛手術を行った患者から採取した毛包に、骨粗しょう症の治療薬として開発された化合物WAY-316606を投与した。
結果は大いに期待の持てるものだった。薄毛の患者の頭皮にこの化合物を投与すると、副作用を起こすことなく、育毛が促進される可能性があるという。
「これまで脱毛治療に使うことなど考えられなかった薬が人間の発毛を促進させる。この効能の転換はきわめて興味深い。いつの日か、薄毛に悩む人の人生が一変する可能性もある」論文の筆頭著者であるネイサン・ホークショウ博士はそう語る。
研究論文は学術誌『プロスバイオロジー』2018年5月8日号に掲載されている。
奇跡の治療法か?
ほかの多くの頭髪研究はまだ細胞培養の段階で、マウスを使った実験でも結果は得られていないのに対し、実際の人間の頭皮で行ったこの臨床試験の結果はずばぬけて有望なものである、と博士は述べている。
「マウスに頼る実験を続けていたら、ずっと見当違いの方向に進んでいたことだろう」
ホークショウ博士によれば、WAY-316606が長く待ち望まれた奇跡の薄毛治療法になるかどうかはまだ何とも言えないという。
「それでも今後、この薬や類似の化合物が薄毛の患者に効果があるか、安全かを検証する臨床実験が必要になるのは間違いない」