ビジネス

2020.02.22

「意味のイノベーション」の権威が説く、日本への処方箋

ロベルト・ベルガンティ氏(写真=藤井さおり 撮影場所=アーカイブストア(Archive Store))

イノベーションの必要性がうたわれ、そのアプローチのヒントとして「デザイン思考」という言葉が叫ばれて久しい。しかし、いまだ多くの人たちがその解にたどり着けずにもがいている。

「デザイン思考だけではイノベーションは生み出せない」。そう断言するのは、ミラノ工科大学教授のロベルト・ベルガンティ氏。氏の著書『突破するデザイン』(日経BP)が話題となり、いまや世界各国の企業や政府からイノベーション政策について意見を求められる人物である。

「今日のイノベーションの課題は、問題を解決するためのソリューションというレベルではなく、『意味のイノベーション』が必要」という氏に、日本において、いかにイノベーションをつくり出していけばよいのか、伺った。


──先程、羽田に到着されたばかりのベルガンティ教授。日本に着いて一番行きたい場所が「ヴィンテージショップ」だということで、こちらの国内外のデザイナーズブランドのアーカイブを集めた「アーカイブストア(Archive Store)」を撮影場所にさせて頂きました。

有難うございます。まさに「意味のイノベーション」を話す場としては最適だと思います。

私たち一般の消費者は、通常、ブティックに足を運んでも、それぞれの作品のコンセプトやメッセージを理解することなく買い物をしたり、身に着けたりしています。

しかし、そこに「何故そのファションなのか」という意味づけをしたのが、ソーシャルメディアでした。特にインスタグラムの発展がファッションの二次市場(セカンドハンド)の台頭に繋がっていると思います。

つまり、新しいファッションを手に入れたと同時に、インスタグラムでオープンにシェアし合うような時代に、高価なブランドのファストファションを所有する意味を見出すことが難しくなって来ているのです。そこで、所有の代わりに生れて来るのがシェアのコンセプトです。高価で手に入りにくいアトリエで制作された、素晴らしいファーストコレクションを人から人、世代から世代へと分かち合い、その価値をシェアして共有できる二次市場の商品は、「ものを捨てない」「ものを大切にする」という、いま盛んに問われている「サステイナビリティ」という観点から見ても、非常に理に叶っています。

一方、各メゾンブランドは、そうした市場の現状をまだまだ理解できていないようですが、これからのハイエンドブランドは、ゴッホやレンブラントの時代を超えた「アート作品」としてその意味をとらえられ、二次市場においてビジネスの活路を見出すようなマーケティングに移行していくと思っています。
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文=谷本有香 翻訳=賀陽輝代 写真=藤井さおり 撮影協力=アーカイブストア(Archive Store)

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