ビジネス

2020.02.22 18:00

「意味のイノベーション」の権威が説く、日本への処方箋


──たしかにヴィンテージコレクションを取り扱う二次市場は、2013年くらい前から少しずつ注目を集めていると聞きます。実際に、スペインでメンズ・ルイヴィトンの二次市場に人気が集まり、それをきっかけにラグジュアリーブランドの一次市場に再び火がつき始めたという経緯もあるらしいですね。
ただ、このファッションの流れがソーシャルメディアなどによってもたらされている側面が強いとなると、ジェネレーションによってその時代変移は異なるということでしょうか?

それはとても的を得た質問であると同時に、お答えするのがとても難しいです。

たとえば、男性用カミソリ・髭剃りのジレットが私のクライアントだった数年前の話です。社内の調査の結果、最近の若者は髭を剃らない人が多いということがわかったのです。

昔の若者は髭剃りを含め、父親、または大人から習慣を学んでいましたが、今は「個」の時代。必ずしも男が髭を剃らなければならないという固定概念に縛られない若者が増えているということなんです。

ファッションや音楽でも同じことがいえて、それは決して特定のジェネレーションがトレンドを決めるものではなく、いわゆる一部のポケットソサエティで生み出されたトレンドコンセプトが、SNSというツールを通し、非常に速いスピードで拡散されるということなんだと思います。

たとえば、リアーナのようなセレブリティがクールにセカンドハンドのブランドを身に着けてレッドカーペットに登場したり、他のセレブリティが40年前にグレース・ケリーが着ていたセカンドハンド・ドレスをレッドカーペットで披露したりと、ファッションの表現の仕方が確実に変化してきていると言えます。



──それは、ファッションの世界以外にも起こっている現象でしょうか?

その通りです。時代と共にリーダーシップにも変化が現れています。

かつてのリーダーはマスキュリンなスーツ姿で会議やプレゼンの場に立つことがほとんどだったと思います。しかし、今は亡きスティーブ・ジョブスなどのビジネス界のリーダーがジーンズにクールなタートルセーターで舞台の上に登場したりする時代になりました。

また、興味深いことに、現在のリーダーシップには、マスキュリンだけではなく、フェミニンな一面を取り入れることによって、既存のバリアを取り除くというプラスを生み出している側面もあります。多様性を生み出すために、あえて「フェミニン・テイスト」を入れていくのです。

たとえば、僕が今身に着けているセカンドハンドのコートジャケット(店内で見つけたヨージ・ヤマモト作品)を着てセミナーの舞台に立った姿を想像してみてください。少なくとも10年前までは多分そうした冒険は許されなかったのではないかと思います。でも、今はそうした自己表現が、ロールモデルとして受け入れられる時代に変わってきているのです。これは、とても素晴らしい変化だと思っています。
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文=谷本有香 翻訳=賀陽輝代 写真=藤井さおり 撮影協力=アーカイブストア(Archive Store)

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