ビジネス

2020.02.22

「意味のイノベーション」の権威が説く、日本への処方箋

ロベルト・ベルガンティ氏(写真=藤井さおり 撮影場所=アーカイブストア(Archive Store))


 

──日本人にいま伝えたいメッセージをお願いします。

10年前のイノベーションはアイディアを出し合い、語り合うことだけでも成り立っていましたが、現在はアイディアが溢れすぎていて、重要なのは、数あるアイディアの中からこれだと思うものを選択、実現に向けて始動させることなのです。

そしてこのアクションが伴わないものはただ単にアイディアだけで、イノベーションとは呼ばれないというのが現実です。

そして、そのイノベーションは、利益を追求するマーケティングに左右されるのではなく、ビジョンを基にした「意味」がなければなりません。たとえば、現在ヨーロッパのマーケットでも人気のある富士フィルムのチェキカメラは、メモリーにバリューを与えたいというビジョンから生まれたイノベーションなのです。つまりは、自分が関わる仕事に自分なりの意味を持って従事するということが大切なのだと思います。

また、チャレンジも大切な要素のひとつです。ひとつの物事を様々なレンズを使って検証することが大切だと思います。つまり偏見をなくし、視野を広げたところから生まれるのが、「真の意味でのイノベーション」なのだと思います。

そして、いつも何か異なったことをトライして見ること。たとえば、職場のリーダーが実際に街の店頭に足を運んで、実際に街中で起きている様々な実態を把握してから会議に参加する。つまり、机上の空論では手に入れることができない実践的な経験と知識に根差したところから生まれるのがイノベーションの真髄ではないでしょうか?

つまり、イノベーションを語る人は自ら何らかの形でイノベーションのお手本を見せる必要があるということです。

そうしたことからも、私が本日、このアーカイブストアで購入したこちらのコートを着用して日本のイベントに登壇する日が来ることに「意味」があると思っています(笑)。


ロベルト・ベルガンティ◎Leadin’ Lab創立者。ストックホルム商科大学でリーダーシップとイノベーションを専門とする教授であると共に、ミラノ工科大学に設立されたリーダーシップ、デザインとイノベーションのラボLeadin’ Labの共同創立者。研究フォーカスは、ユーザーとクリエーターの両方に愛されるイノベーションをどのように生み出し、リーダーと組織がいかに新しいビジョンを創案し実現するか。著書に『デザイン・ドリブン・イノベーション』(クロスメディア・パブリッシング)『突破するデザイン』(日経BP社)。

文=谷本有香 翻訳=賀陽輝代 写真=藤井さおり 撮影協力=アーカイブストア(Archive Store)

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