フォーブス ジャパン副編集長 / チーフコミュニケーションディレクター


──そうですね。一方、そのような「演出」には、個の尊重とイマジネーション・パワーが必要だと思います。それは、個よりも国家や社会、あるいは、周囲の目を優先する傾向にある日本社会の成り立ちと矛盾するように思います。その点について「意味のイノベーション」を日本社会がどのように受け入れるのか。成功の鍵は何だとお考えですか。

そうですね。私が日本についていつも感じているのは「年齢の壁」なんです。たとえば、ティーンエイジャーを含め、若者たちにはいつでも想像力を発揮することが許されているのが、なぜか、ある年齢になるとそのクリエイティブという「玩具」を鍵の掛かった箱の中に戻さなければならない。

勿論、私はそこまで日本社会を熟知している訳ではありませんが、外側から日本社会を見ることしかできない外国人の私から見ると、そのような印象を受けたりしています。

しかし、新しい社会的価値観を尊重する若者たちが、これから「意味のイノベーション」に向かって、よりオープンな社会づくりをしていくのは、時間の問題ではないかと思っています。

──古い歴史を持つ日本には「温故知新」と言うことわざがあります。その歴史の重み故に、海外から見ると遅々とした「改革」という印象を持たれる側面があるようですが、この日本人が重んじる「旧きを温め、新しきを知る」という考え、そして、そこから生まれるジレンマについて、教授の見解を頂けませんか。

それは古い歴史と共に生きる私の母国イタリアでも同じことが言えると思います。日本の教育システムについてはあまり良く知りませんが、イタリアでは6歳から18歳までの学校教育で一貫して、古い歴史から生まれて来る「Why」を自分に問いかけ続けるという教育を受けて育ちます。

つまり、ただ単に「結果」や「利益」を目指すのではなく、「何故、好きなのか?」「何故、やるのか?」等、自分への問い掛けを促す思考法を身に着けるような教育がなされています。

車やロボット産業などで世界に秀でた「モノづくり」で知られる日本ですから、その製造過程で、この「Why」の思考はすでに発揮されているはずです。ただ日常思考の中で「Why」に関して言えば、確かに日本人は「自分を従来の『システム』から解放する」為に、外部からのチャレンジが必要かもしれませんね。そうしたチャレンジによって今までの安全な領域内では見えなかった様々な新しい発見が生れてくると思います。

もう一つ、イノベイティブ・ブレークスルーについては、現在まだ検証中なのですが、ブレークスルーが生まれ出る背景には「インティマシー(閉ざされた安全地帯)」が必要というセオリーがあります。

スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツ、ファッション界で言えばドルチェ・アンド・ガッバーナやヴァレンチノなど、全てはパートナーシップのもと、このブレークスルーが起きているという立証は非常に興味深いものだと思います。

共感や価値観を分かち合う二人の間ではどんなにクレージーなアイディアを口に出しても誰にも笑われない、批判されないという「セイフティーネット」が張り巡らされた環境は特に日本のような「沈黙は金なり」のようなカルチャー背景を持った社会でのイノベーションに大切、かつ、必要な条件なのかもしれませんね。

文=谷本有香 翻訳=賀陽輝代 写真=藤井さおり 撮影協力=アーカイブストア(Archive Store)

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