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2020.02.19

ヴァージン・ギャラクティック、宇宙旅行の実現に一歩前進

宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック創業者リチャード・ブランソンがニューヨーク証券取引所で上場セレモニーの鐘を鳴らした(2019年10月28日)(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

バレンタインデーの14日、株式市場の低迷にもかかわらず、宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの株価は21%以上上昇し、過去52週間で最高値をつけた。同社は保有資産額40億ドル(約4400億円)、フォーブス世界長者番付で478位の英大富豪リチャード・ブランソンが2004年に創業したが、まだ利益を出せていない。

株価が急上昇した理由は、同社が3時間のポジショニングフライトを行ったことにある。同社は宇宙旅客機「スペースシップ2」を、カリフォルニア州モハベ空港からニューメキシコ州の宇宙港「スペースポート・アメリカ」にある自社施設まで移動させた。この単純な飛行は同社にとって「商業サービスを実現するための重要な一歩」だった。

長い間約束されていたスペースポート・アメリカへの機体輸送は、15年にわたり世間からの信頼獲得に努めてきた同社にとって、まさに大きな一歩だ。同社の宇宙旅行商品は既に約60カ国600人以上に販売され、前払金が支払われている。

だがヴァージン・ギャラクティックはリバースマージャー(逆さ合併)を通して2019年10月に株式上場を果たす前、他の会社ならば計画中止を余儀なくされるような失敗や論争を起こし、注目を浴びていた。

スペースポートはニューメキシコ州の税金2億5000万ドル(約270億円)以上を投じて建設された後も、長年にわたりほぼ未使用の状態だった。米誌アトランティックは2018年、「スペースポートは2010年からフライトが可能になっていたが、中核テナントであるヴァージン・アトランティックの最初の打ち上げはまだ実現していない」と伝えている。

もちろん、ヴァージン・アトランティックの最大のつまずきは、2014年に初代スペースシップ2がテスト飛行中に墜落し、操縦士1人が死亡、1人が負傷し、機体が大破した事故だ。しかし、同社はアブダビやボーイングなどから集められた10億ドル(約1100億円)以上の資本を基に操業を続け、機体の輸送という大きな節目を迎えることができた。

機体の輸送は、輸送用航空機からつり下げる「キャプティブキャリー飛行」方式で行われた。飛行中、ヴァージンは機体を3時間以上にわたって高高度・低温の環境下で評価することもできた。同社によると、これを地上レベルで再現するのは難しい。

ヴァージン・ギャラクティックは今後、ニューメキシコ州の宇宙港でスペースシップ2のキャプティブキャリーと滑空飛行を行い、フライトチームが地上の空域・地上管制と連携できるよう試験を行う予定。その後、チームはスペースポート・アメリカからロケットを動力源としたテスト飛行を行い、機体のパフォーマンス評価を継続する。これには、「最終的な宇宙船のキャビンと顧客体験を評価し、商業宇宙飛行の営業開始に備えること」も含まれる。

ブランソンは、自らが最初の乗客の一人になると宣言している。7月には70歳を迎えるが、現実離れしたキャリアを築いてきた彼は、宇宙旅行事業を実現させるかもしれない。

編集=遠藤宗生

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