ビジネス

2020.02.24

通訳は格闘技だ。高度なスキルを操る言葉のプロフェッショナルたち

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無くならない通訳という価値。話者と作る言葉の二人三脚


AIは、すでに多くのジャンルで活用が進むが、外国語の翻訳に関しても、映画さながらに自動で変換され言葉の壁が無くなる日もそう遠くないのかもしれない。

だが、通訳者の育成にも力を入れるサイマル・インターナショナルでは、それは遠い先のことと考えているようだ。林聖子は長い経験から異を唱える。

「単語を置き換えるのは機械でも可能です。ただそれを相手に伝わるコンテキストにするのは難しい。通訳でいうと、英語が話せること、TOEIC満点の実力があることは当然。ただし訳すとなると別のスキルが求められるのです。弊社では、通訳者養成部門で話者の言葉を聞き取り理解し、伝えるための訓練を重ね、通訳スキルを十分習得します。その上でプロ通訳者として会議の現場に輩出しています」

話を聞いたサイマルインターナショナルの3人の写真

同社の通訳者・翻訳者養成校、サイマル・アカデミーの授業時間は年300時間。2年~4年をかけてプロに必要なスキルを学ぶ。受講者は仕事を持っている人がほとんどで、過酷な学びと言えるだろう。考えてみれば、言葉ひとつで場合によっては戦争すら起きかねないし、ビジネスでは大きな損失も生みかねない。最高の人材を輩出するための責任とも言える。

また、サイマル・インターナショナルでは、通訳者がクラウドで会議に参加する新たなビジネスをスタートさせている。昨今はWEB会議も多くなり、リアル会議とミックスされた形態も当たり前となっている。その場にインターネット回線を経由して通訳者が参加するというサービスだ。通訳は機械にとって変わられない。しかし、時代に合わせテクノロジーを活用する好例となるだろう。

案件の周辺情報を深く広く念入りに調べ、それが話者の言葉とリンクし、適切な訳がリアルタイムで出てくる。話者と作る言葉の二人三脚と表現できる通訳。この存在は、政治やビジネスでも、高い成果を得られるパートナーとして、大きな安心感につながることだろう。

文=坂元耕二 写真=西川節子

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