2月上旬には、名古屋大学の教授が、43万円の研究費を不正利用したとしてニュースにも取り上げられた。具体的な経緯や背景、また悪意があったかどうかは定かではないが、いずれにせよ大学の研究費の確保・分配という問題は、今後も日本社会を取り巻いた大きな話題となっていくに違いない。
ところで、国の研究費が日本と比較すると増加傾向をみせている韓国では、その公平な評価・分配のために人工知能(AI)を利用しようという動きがある。
韓国研究財団(NRF)は、最近発表したイシューレポートのなかで、「ビッグデータ分析を利用した研究費の誤乱用の予防」というテーマについて論じた。これは、民間企業の横領や会計不正、補助金詐取などのパターン分析するアルゴリズムの活用例を参考にしたもので、同様に研究費の統合管理システムに蓄積されたデータをAIに学習させ、誤乱用を事前に防ごうという提案である。
財団側が研究現場の関係者たちに意見を集めたところ、研究費の使用内訳に対する判断が曖昧になる場合が多く、またその使途を研究者に尋ねても以前と同じ答えが返ってくるなど判断に非常に困る時が多々あるという。
また、研究費の正当性を判断する・もしくはされる作業に追われ、本来力を注ぐべき研究業務が疎かになるというケースも少なくなかったそうだ。このような問題は、おそらく韓国だけでなく世界中のどの研究現場においても起こりうることだろう。
財団の研究費管理チーム関係者はメディア取材に対し、研究が進めば研究費の浪費の防止だけでなく、正しい研究開発費の効果を促すことにも繋がるだろうと期待を示している。また、研究費の利用に関するリアルタイム分析も可能になるだろうとしており、その際にはさらに効率的な研究費の配分が実現できると展望を語っている。
今後、ある組織の強化、もしくは全体最適化のための予算の適切な分配というテーマにAIが使われだすとしたら、非常に興味深いユースケースとなるのではないか。というのも、人材とお金というファクターが存在しない組織は存在しなからだ。人工知能がどこまで有効活用、また応用されていくか注目していきたい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>