このハンドブックはテスラの人事担当者や社内顧問にとっては大きな不安の元となるだろうが、労働者にとっては素晴らしいものだ。ハンドブックには全従業員に対する次のような注意書きがある。
「あなたが会社の方針や規則が詰め込まれた従来型の従業員ハンドブックを探しているのなら、それは見つけられないだろう。方針や規則は底辺がどこにあるか、つまりどれほど低いパフォーマンスを見せたら解雇されるのかを示すものだ。それは私たちのやり方ではない」
ハンドブックは、創業者のマスクと同じく実用的・直接的で要を得ており、人々に責任を持たせ、要件を明確・簡潔に提示している。ハンドブックでは、信頼が極めて重要だとされている。同社は従業員に完全な信頼と信用を与え、そして重要な責務を課している。
ハンドブックは最も重要なこととして、会社の成功は全員の手にかかっていると指摘している。つまり、全従業員が企業オーナーのように行動する必要があり、変化や改善の良いアイデアがあれば、それを適切な上長に共有すべきということだ。テスラの従業員は、自分には価値のある考えがあると思う場合、マスクを含め経営陣と自由に話すことができる。これにより、全員が自分の仕事やキャリア、テスラの将来に責任を持てるようになる。
ハンドブックに挙げられた規則の一つは、仕事を楽しむことだ。従業員は新しい友人を作り、最高の自分を目指し、わくわくする新課題に取り組むことが奨励されている。同社は、全員が一生懸命働き、仕事を愛し、楽しむことを望んでいるのだ。
ただ皮肉なことに、こうした社内規則の一部はマスク自身によって少し(時には大胆に)無視されてきた。例えば、マスクはタイの洞窟に閉じ込められた子どもたちの救出活動に参加したスキューバダイビング専門家を「小児性愛者」と呼び、名誉毀損(きそん)で訴えられた。(ただ、ハンドブックでは他人の中傷について具体的な記述はない)